測地観測

担当機関:国土地理院
担当機関のページ:https://www.gsi.go.jp/KOKUSAI/nankyoku.htm

南極地域の測地情報及び地形情報は、隊員の安全な野外活動を支える基盤情報であるとともに地球規模気候変動の解明に必要不可欠です。そのため、国際地球基準座標系(ITRF:International Terrestrial Reference Frame)に準拠した測地基準座標系に基づいて、南極の氷床とその基盤も含めた高精度な測地情報及び地形情報の整備を継続しています。

具体的には、 測地観測では、国際GNSS事業(IGS:International GNSS Service)に参加し、 全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)観測・解析等を通じて全球統合測地観測システム(GGOS:Global Geodetic Observing System)の活動を推進することにより、地球規模の測地パラメータ取得と高精度な測地基準座標系の構築に貢献します。

その上で、沿岸域及び内陸域において、正確な地形情報整備に必要となる測地測量を実施します。また、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)及びヘリコプターから撮影した空中写真等から大縮尺地形情報を、衛星画像により小縮尺地形情報を整備します。
さらに、多分野にわたりデータの利用者が世界中に存在することから、積極的にインターネット等を活用し測量成果の公開・提供を行います。

測地測量

地球規模の測地パラメータ取得

IGSに参加し、GNSS観測・解析等を通じてGGOSの活動を推進します。また、地球規模の重力場の変動を把握するため重力観測を行います。

①精密測地網測量
ITRFに準拠した正確な位置情報を整備するために、GNSS観測や重力観測を行なっています。

②氷床変動測量
南極大陸の氷床上に設置したGNSS観測点上で継続した観測を行うことにより、大陸氷床の流動の経年変化を検出します。

P50地点での氷床変動測量(撮影:JARE61 寺村たから)

S17地点での氷床変動測量(撮影:JARE61 寺村たから)

③GNSS連続観測点(IGS軌道追跡局)保守
IGSに登録されたITRFを構築する際の根幹の観測点であるGNSS観測点について、連続観測を安定的に継続するため、保守点検を実施します。

④露岩変動測量
氷河の後退による地殻の隆起現象(GIA:Glacial Isostatic Adjustment)により生じる地殻の上下変動を高精度に検出するため、1999年からGNSS固定観測を実施しています。安定した観測を継続するため、GNSS固定観測点の保守及び受信機等の交換を実施します。

局地的な測地情報の精密化

日本の南極観測事業に必要な地域の位置情報を維持管理します。また、正確な標高及び地形情報を整備するために、重力観測、GNSS観測、水準測量等を取り入れた測地測量を実施します。

地形情報の整備

南極の沿岸から内陸に至る氷床を含む地形情報の整備として、UAV及びヘリコプターから撮影した空中写真により大縮尺地形情報を整備更新するほか、衛星画像により小縮尺地形情報を整備します。

精密地形測量(空中写真撮影)

UAV及びヘリコプターにより詳細な空中写真撮影を実施するとともに、撮影位置を算出するためGNSS測量を実施します。

大縮尺地形情報整備

オングル島やラングホブデなど空中写真撮影を実施した地域において、詳細な数値標高データ等の大縮尺地形情報を整備します。

小縮尺地形情報整備

わが国の南極観測の活動域において、陸域観測衛星(ALOS:Advanced Land Observing Satellite)による衛星画像、地球地図などを用いて、25万分の1衛星画像図・5万分の1地形図等の小縮尺地形情報を整備・更新します。

空中写真や衛星画像上で基準点の位置を判別できるようにするための目印である対空標識の設置(撮影:JARE62 井出順子)

南極の地理空間情報の公開

基準点測量、水準測量、重力・地磁気測量、GNSS(GPS)連続観測の成果や、写真測量による地形図等、南極地域観測事業により国土地理院が蓄積してきた地理空間情報をウェブで公開しています。