南極大気精密観測から探る全球大気システム

課題番号:AJ0901
代表者:佐藤 薫(東京大学)

気候の将来予測に用いられる気候モデルでは、大気重力波と呼ばれる比較的スケールの小さい(届く範囲は水平方向に10~1000kmくらい)大気波動の影響をどのように取り入れるかが大きな課題となっています。このプロジェクトでは、昭和基地上空の大気重力波が作り出す風速変動を従来になく詳細に観測できる大型大気レーダー(PANSYレーダー)を中心に、電波や光を使って昭和基地上空の温度や物質分布を測定する様々な観測装置を組みあわせ、大気重力波が地球規模の大気の流れ(大気大循環)を作り出すのに果たす役割を明らかにすることを目指しています。

PANSYレーダーは、高さ3mのアンテナ約1000本を使って上空の風やプラズマを観測する装置です。2011年に建設され、2012年より部分システム、2015年よりフルシステムによる観測を継続しています。これまでに、昭和基地上空の大気重力波の季節変化や高度変化、夏の中間圏(高度50〜90km)の大気大循環の駆動に周期の長い大気重力波が主要な役割を果たすことなどを明らかにしました。

南極昭和基地大型大気レーダー(PANSYレーダー)

また、北極の成層圏(高度10〜50km)の変動が南極の中間圏の変動を引き起こす両半球結合と呼ばれる現象のメカニズムを解明するため、世界中の大型大気レーダーによる国際共同同時観測計画(ICSOM)を主導し、実施しています。

大型大気レーダー国際共同観測網)

大型大気レーダー国際共同観測網

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