ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

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2019年2月15日(金)に北海道大学総合博物館において、一般向け講演会「グリーンランドとアイヌの狩猟文化:環境保全と文化継承の取り組みから」を開催しました。この講演会ではグリーンランド・カナック村の大島トク氏やアイヌ文化の継承者を招いて、狩猟・漁業と文化継承について講演するとともに、座談会形式で意見交換を行いました。

今回はアメリカが議長国となって4回目の会合でした。議長国は2年で交代しますので、今回がアメリカにとって最後の役員会議となります。会議はアラスカのアンカレッジからバスで20分ほど離れたThe Alaska Native Heritage Centerで行われました。ここには、先住民の文化や生活に関する博物館や集会施設がありました。敷地内には伝統的な住居もいくつか建てられており、内部の様子も見ることができました。また、保育園も併設されているようで、会議初日はアンカレッジで有名なマッシャー(犬ぞり使い)が10頭程度の犬を連れてきており、会議中に子供を犬ぞりに乗せ、施設の周りを回っていました。会議参加者は生物好きが多いので、会議中は「チラ見」で我慢していましたが、休憩時間になった途端、多くのメンバーが、犬ぞりに乗って楽しんでいる子供達を羨ましそうに眺めていました。

2019年2月17日に開幕した第34回北方圏国際シンポジウムのイベントとして、グリーンランドカナック村在住の猟師 大島トクさんによる特別講演が、紋別市民会館で行われました。大島トクさんは、私達のグリーンランドにおける氷河と海洋に関する研究活動を支援してくださっています。例えば、氷で覆われる海の案内役として、海洋観測に欠かせない船の操船を行っています。さらに、研究者とカナック住民とのワークショップ開催に尽力した立役者でもあります。特別講演では、グリーンランドの伝統的な狩猟・工芸文化と、それら文化伝承の取り組みについて話されました。トクさんは、グリーンランドの伝統文化が忘れ去られることに強い懸念を抱いていて、若い世代に、文化を伝承する活動をしています。「今の子供たちは、民族衣装の作り方を親から教わることが少なくなった。だから自分が教えるんだ」という彼女の力強いメッセージは、150人を超える聴衆に確かに伝わったことでしょう。

北極評議会(AC)の北極動植物相保全ワーキンググループ(CAFF)が主催する第2回北極生物多様性会議(2nd Arctic Biodiversity Congress, ABC2)が2018年10月9日から12日まで、フィンランドのロヴァニエミで開催されました。第1回(2014年12月、トロンハイム、ノルウェー)は、2013年に発表されたArctic Biodiversity Assessment (ABA)(*1)のキーコンセプトや基本的体制に関する議論が中心でしたが、今回はABAをベースに行われている提言や実践の社会実装(政策化・実践)が主題となりました。

グリーンランド南西部における氷河表面の反射率データの解析を行うため、イギリスのアベリストウィス大学に2018年11月26日から12月14日までの約3週間にわたって滞在しました。

近年、グリーンランド氷床の融解が急速に進んでいることが明らかになっています。この融解には、地球温暖化だけでなく、氷床表面の反射率の低下(暗色化)が寄与していると報告されています。反射率低下の要因は、氷河上での微生物の繁殖や黒色炭素や鉱物ダストなどの沈着、雪氷粒子の形態変化や含水率の増加などで、これらの要因がそれぞれ反射率低下に寄与する度合いや、反射率の時空間変化を把握することは、今後の融解を予測する上で重要です。

北極評議会PAMEワーキンググループの2018年第2回総会が、ロシアのウラジオストク市にて開催されました。議事は、実施中のプロジェクトの活動報告、11月に予定されている次のSAO会合への報告事項、およびPAME 2019-2021 ワークプランへの準備と新規プロジェクト提案の審議などです。来年は北極評議会議長国がフィンランドからアイスランドに移るため、多くのプロジェクトが節目を迎え、成果報告、継続する次期の実施計画、および新規提案に関する多くの案件が協議されました。

地球温暖化が進行中にも関わらず、北半球中緯度域の特にユーラシア大陸中央部では近年寒冬が頻発しています(図1a)。北極海の海氷減少(図1b)による中緯度大気への遠隔影響がユーラシアの寒冷化の原因であることが指摘されていますが、観測データを基にした解析や数値モデルによる実験結果の間で結論が異なり、その反直観的な影響の妥当性が議論になっていました。

ArCS若手研究者海外派遣事業のご支援を受け、2018年10月16日から11月30日までの間、ドイツのMax-Planck institute for Meteorology (以下MPI-M)に滞在しました。私は新潟大学の大気海洋システム研究室に所属し、対流圏と成層圏の境界である対流圏界面の変動について研究しています。対流圏界面の変動は気候変動の指標となり、温暖化の傾向を示すことが知られています。一方で北極域では全球平均と比べて著しい速度で温暖化が進んでいることがこれまで明らかとなっています。本派遣では北極域の対流圏界面変動の実態、またその要因について温暖化あるいは内部変動との関係を明らかにすることを目標としました。派遣先であるMPI-Mはドイツ・ハンブルクに位置し、約200名の大気・海洋・陸面の研究者が在籍しています。受入研究者であるElisa Manzini博士を中心に、様々な分野の研究者の方々と多角的な意見交換を行ってきました。特に派遣期間中頃に行われたセミナーにて初期解析の結果と今後の研究方針について発表させていただいた際には、多くの海洋学者の方々にもご参加頂き新たなテーマの発見へとつながるアドバイスをいただきました。他にも研究所内で行われるワークショップや各分野のセミナー、研究所全体の今後の方針について全員参加で議論するretreat に参加させていただき、大学とは異なる研究機関での研究生活を体験できました。

12月10日(月)から12月14日(木)までの5日間にかけて、ワシントンD.C.(アメリカ)にて開催されたAGU Fall Meeting 2018に参加しました。期間中は4日目の午前中にポスター発表を行い、それ以外の時間は口頭発表に参加したり、協賛ブースの見学やワシントンD.C.内の観光をしました。

北極域氷河の動態と質量変動について議論するワークショップが、2019年1月21-23日にノルウェーのイェイロで開催されました。国際北極科学委員会(IASC)傘下の北極域氷河研究ネットワーク(NAG)が主催するワークショップで、今年で15回目を迎えます。