小型衛星レーザ測距システムの開発と南極初試験

課題番号:AH1004
代表者:大坪 俊通(一橋大学)

観測概要

パルス型のレーザ光により人工衛星の軌道を正確に測る技術を衛星レーザ測距と呼びます。地上からレーザを発射し、それが衛星に搭載された反射鏡で戻され、また地上に戻ってくるまでの時間を非常に正確に測ります。世界には30局程度のレーザ測距観測局があります。本来、できるだけ地球上の広い範囲にレーザ測距観測局を設置できるとよいのですが、導入コスト・運用コストが高いため、現状は北半球中緯度域に偏って、南緯36度以南は空白域になっています。本研究では、低価格でコンパクトなレーザ測距装置を開発し、各種試験を経て、世界で初となる南極でのレーザ測距に挑戦するものです。さらに、将来の定常運用化をめざして、現地にて発生する問題点を収集することも重要な課題です。

長年にわたる多くの方によるご尽力により、昭和基地にはVLBI・DORIS・GNSS・重力計といった測地関連施設がすでに備わっており、南極で最も測地観測が進んでいる場所です。これに衛星レーザ測距装置が加わると、フルセット(国際的に「GGOS コアサイト」と呼ばれる)を装備することになります。人工衛星が南半球高緯度域を通過するときにもレーザ測距観測ができるようになると、衛星の軌道決定精度が高まり、汎地球規模での位置や重力がより正確に求められるようになります。海面の上昇や氷の減少など地球環境変動監視に欠かせないものです。

国立極地研究所屋上で試験中の小型の衛星レーザ測距システム。

人工衛星 Sentinel-6a (中央の点)に対してレーザを照射する様子。流れる線は恒星。