南極30cmサブミリ波望遠鏡による星間ガスの進化・星形成過程の解明

課題番号:AP1005
代表者:久野 成夫(筑波大学)

課題概要

銀河系(天の川銀河)は数千億個の星からできています。星は星間空間に漂う分子ガスから作られますが、星間分子ガスは温度が低く可視光で見ることができません。そこで、分子ガスから星が作られる様子を観測するために、電波が使われます。ただし、最も量が多い水素分子は、低温では電波でも観測することができないため、代わりに一酸化炭素分子(CO)の出す電波がよく使われます。しかし、希薄な分子ガスでは、COが紫外線や宇宙線によって解離されてしまうため、COでも観測することができない“暗黒ガス“が存在することがわかってきました。

我々は、”暗黒ガス“が銀河系のどこにどれだけ存在するのかを明らかにするために、南極ドームふじに30cmサブミリ波望遠鏡をもっていき、中性炭素原子(CI)の出す周波数492 GHzの電波を使って、天の川の広域観測を行います。同時に、CO(J=4-3)という輝線(461 GHz)も観測して、星が誕生している場所に付随している高温高密度の分子ガスも同時に観測します。

この観測によって、希薄な分子ガスから高温高密度な分子ガス、そして星へと星間ガスが進化していく様子を明らかにしていきます。これらの輝線は周波数が高いため、大気の透過率が地上で最も高く安定な南極内陸部での観測が極めて有効になります。この観測が、日本における南極天文学の幕開けとなります。

南極30cmサブミリ波望遠鏡

天の川。黒く見えているところには、星間ガスや星間ダストが存在する。