マルチスケールのペンギン行動・環境観測で探る南極沿岸の海洋生態系動態

課題番号:AP1006
代表者:國分 亙彦

課題概要

南極沿岸には海氷が発達し、それを起点とした世界有数の生物生産の高い海域となっています。その一方で近年、海氷面積が急激に減少しており、このような海氷の変動が生態系に及ぼす影響について、注目が集まっています。そこでこの課題では、春から冬まで大小様々なスケールで行動するアデリーペンギンに海洋観測を手伝ってもらって、海氷の変動と、ペンギンの餌取りや繁殖がどのように結びついているのかを明らかにしようと考えました。

春には、ペンギンは数百キロの範囲を回遊します。この時期にペンギンに小型の海洋観測機器を取り付け、沿岸の広範囲の海洋環境を計測します。夏には、ペンギンの移動範囲は数キロ~数十キロに狭まります。この時期にコロニーの大多数のペンギンに行動記録計を同時に取り付け、ペンギンの集団行動を明らかにすると共に、付近の海氷下に遠隔操作型水中探査機(ROV)を入れ、オキアミや魚などの分布を調べて、海氷下の食う食われるの関係を明らかにします。秋には、新型の衛星発信機をペンギンの巣立ち雛に取り付け、どのような場所で生存していたりうまく餌を取ったりしているのかを、冬の海氷の分布と関連付けて明らかにします。

これらの観測結果を互いに組み合わせることで、海氷や海流の影響が南極沿岸の生態系の中をどのように伝わってゆくかを明らかにすることを目指しています。

海氷の浮かぶ海で生活するアデリーペンギン

春の観測のイメージ図

夏の観測のイメージ図