南大洋における大気中CO2・O2濃度の変動とCO2収支の定量化

課題番号:AP1008
代表者:後藤大輔(国立極地研究所)

課題概要

大気中の酸素(O2)濃度は、二酸化炭素(CO2)の変動と密接に関係しており、両者を同時に観測することで、化石燃料消費によって大気に放出されたCO2の陸上生物圏と海洋への吸収量を定量的に評価することができます。この目的のために、これまで主に地上観測基地で両者の同時観測が展開されてきましたが、観測点は未だ限られており、海洋上の観測、特に南大洋上の観測は皆無でした。

本課題では、「しらせ」が航行する南大洋上で大気中CO2とO2の濃度を連続的に観測することで、これまで観測の空白域となっていたこのエリアにおける両成分の時空間変動を明らかにします。また、海洋生物(植物プランクトン)活動や海水温の変化に伴う季節性を持った大気-海洋間のO2交換についても不明な点は多く存在し、それがCO2吸収量の評価の誤差要因の一つにもなっています。海洋生物活動が活発な領域を通過する「しらせ」上では、海洋生物活動に伴うO2放出・吸収のシグナルを観測できる可能性もあり、大気-海洋間のガス交換および海洋生物生産量の定量的な理解への貢献も期待されます。このような活動を通じて、南大洋のCO2吸収量のより正確な理解を目指しています。

写真:柏瀬陽彦

衛星観測データから推定された南大洋上の生物生産量の分布(2017年12月3-10日)とJARE59の「しらせ」航路(赤線)
作図:武林秀一朗