南極対流圏中の物質循環と大気酸化能の4次元像から気候変動への影響を探る

課題番号:AP1009
代表者:原圭一郎(福岡大学)

課題概要

春~初夏にかけての南極上空にはオゾンホールが出現します。オゾン層は太陽からの有害な紫外線を吸収する役割も果たしており、オゾンホールが出現すると地上までの紫外線量が増加します。大気中の光化学反応には紫外線が重要なため、紫外線量が増加すると、大気中の酸化剤の濃度と分布を変化させ、物質の循環に大きな影響を与えていることが予想されています。

本研究では、オゾンホールによる大気中の物質循環過程の変化が気候変動に影響に与えているのか、その影響はどの程度なのかを理解することを目的としています。最近の研究からオゾンホールの規模が徐々に縮小を始めた兆しが確認されています。オゾンホールがなくなるのは約40年以上先になると予想されているため、オゾンホールがない状態の観測はまだできません。まず、現在の大気・雪氷中の物質の動きを観測し、3次元の物質循環過程を捉えます。オゾンホール出現前の状態を知るために、過去に積もった雪氷試料を採取し、分析することで、過去の大気質の復元も行います。過去と現在の大気中の物質循環過程を理解した上で、モデルにより大気中の物質の動きを再現し、オゾンホール出現前の過去~オゾンホールが出現する現在~オゾンホールなくなった未来の大気中の物質の動きを4次元的に捉えて、オゾンホールの出現・縮小が、南極大気中の物質循環過程に与える影響、それらが気候に与える影響を評価・予測することも目指しています。

本研究の概略図

主な観測機器を設置する清浄大気観測室
JARE59 加藤隊員撮影