リスク対応の実践知の把握に基づくフィールド安全教育プログラムの開発

課題番号:AH0908
代表者:村越 真(静岡大学)
実施期間(隊次):61次、62次、63次

リスクに囲まれている現代生活にリスクマネジメントは不可欠です。その方法論は国際規格やJIS規格として示されています。しかし、それらは組織が確率的に評価可能なリスクを対象とするものです。個人が過酷な環境の中で遭遇するリスクをどう捉え、またどのような認知的プロセスを経てマネジメントを実行しているかは、未解明です。

これまで、自然環境での様々な活動を対象に研究を進めてきましたが、南極という一般の人が遭遇しうるもっとも高いリスクがある環境での任務に従事する科学者や安全管理隊員がどのようにリスクを捉え、対処しているかを明らかにするとともに、それを踏まえた安全教育やリスク管理のあり方を探るのが本プロジェクトの目的です。

58~59次隊で実施した調査によって、野外観測支援隊員のリスクマネジメントの様式が明らかになった他、リスクの捉え方が確率や損害に限定されない多面的なものであること、対応の判断においては、単にリスクだけでなく、行動の文脈や意義など様々な要因が考慮されていることなど、安全教育の基礎になる知見が得られています。

個人がリスクに対応する規範的方法を明らかにすることは、リスク社会と言われる現代の個人の安全にも大きく寄与するとともに、自然の中で人がリスクという事象をどうカテゴリー化しているかを明らかにするという、認知心理学的な観点からの成果も期待できます。

ヘルメットの脇に着装したウェアラブルカメラで、現場でのリスク対応についての行動と発話を記録する。

記録したビデオを元に室内で回想的にリスク対応行動について聞き取りを行う。

質的研究によって得られたフィールドアシスタントのリスクマネジメントの実践知(村越・満下、2020)を改変。

関連する研究成果