高エネルギー粒子降り込みに伴う大気電離のスペクトルリオメータ観測

課題番号:AH0906
代表者:田中 良昌(国立極地研究所)
実施期間(隊次):63次

北極や南極の空では、冬の間、しばしば美しいオーロラを見ることができます。オーロラは、地球の周りの宇宙空間から極域上空に降り込んでくる高いエネルギー(約0.1~数10キロ電子ボルト(keV))の電子が高さ約100~300kmの大気に衝突し、発光する現象です。もっと高いエネルギー(数10~1000keV)の電子は、より低い高度(約50~100km)まで侵入し、その場の大気を電離したり、オゾンを減少させるなど、大気に影響を及ぼします。我々は、高エネルギー電子がいつ、どこで、どのようなしくみで降り込み、大気にどのような影響を与えるのかを調べるために、新しい観測装置「スペクトルリオメータ」を開発しています。

リオメータは、銀河から飛来する電波の強さを測る装置です。オーロラに伴って高エネルギー電子が降り込むと、上空大気の電子密度が増加し、銀河電波が吸収されて減衰します。リオメータによってこの銀河電波の減衰を測ることで、高エネルギー電子の降り込みを知ることができるのです。スペクトルリオメータは、20~60メガヘルツ(MHz)の広い周波数帯の銀河電波を測定することで、上空約50~120kmの電子密度の分布を知ることができる最先端の観測装置です。

我々は、63次隊で、このスペクトルリオメータを昭和基地に設置する計画です。南極初となるスペクトルリオメータ観測により、宇宙空間から降り注ぐ高エネルギー電子が地球の大気に与える影響の解明を目指します。

スペクトルリオメータによって大気の電子密度の分布を測定するしくみ