南大洋インド洋セクターにおける海洋生態系の統合的研究プログラム
-海氷を起点とする食物網・低次生産システム-

課題番号:AP0939
代表者:茂木 正人(東京海洋大学)
実施期間(隊次):61次、63次

南大洋(南極海)は冬季に広く海氷に覆われますが、夏季にはその80%程度が融けて消失します。この海氷の季節的な消長は南大洋の生物の暮らしに大きな影響を与えています。

海氷には微小な植物・動物や有機物が高密度で含まれていますが、春から夏の海氷の融解に伴って微小生物・有機物は海水中に放出されます。しかし、この放出量がどれくらいで、どのように海中の生態系に寄与するのかはよく分かっていません。海氷から放出された生物・有機物はそのまま沈降するだけではなく、動物プランクトンなどに食べられることにより、エネルギーフロー(食物網)に取り込まれると考えられます。

我々は、東京海洋大学練習船「海鷹丸」と南極観測船「しらせ」による生物採集と海洋観測(生息環境の把握)、そして海氷の採取を行い、これまでに様々な生物が直接あるいは間接的に、多少なりとも海氷性の生物・有機物に依存したエネルギーフローの構成員であることを明らかにして来ました。

このことは、気候変動によって海氷の量や面積が変動すると、エネルギーフローを通じて生態系が影響を受けることを意味しています。

南大洋の氷縁を航行する東京海洋大学「海鷹丸」

海氷の中から見つかった珪藻(走査型電子顕微鏡写真)。(極地研:高橋啓伍)

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