東南極の大陸地殻の発達過程と地殻流体に関する総合的研究

課題番号:AP0916
代表者:土屋 範芳(東北大学)
実施期間(隊次):61次

私たちは46億年の地球の営みを南極から明らかにしようと思っています。南極の表層の98%は氷に覆われていますが、残り2%弱の露出した陸地には素晴らしい岩石を見ることができます。特に東南極のセール・ロンダーネ山地は、東西200km、南北100km(大体四国くらいの)面積に、火成岩やさまざまなタイプの変成岩が分布していて、多様な反応様式を観察することができます。この山地は、5-6億年前の大陸衝突帯、つまりはゴンドワナ大陸を形成する重要な縫合帯のひとつと考えられています。そしてこの山地には、岩石-流体の反応プロセスが極めて明瞭に残されています。

流体:それは、地球の進化過程を明らかにするうえで極めて重要な物質形態です。地球内部には、表層の海水よりも多くの流体が存在し、そしてその流体が、地震や火山などの顕著な地球科学イベントを引き起こす重要な役割を果たしています。地球科学イベントを理解して、地球(大陸)の発達プロセスを編むためには、岩石と流体の相互作用をつぶさに観察する必要があります。東南極セール・ロンダーネ山地ではそれがとてもよくできる、世界でも一級の場所です。

地球を理解する先端的の取り組みを、東南極のセール・ロンダーネ山地を舞台に始めたいと考えています。

セール・ロンダーネ山地のキャンプ風景(河上ら,2020,南極資料)

セール・ロンダーネ山地の地質調査風景。60日滞在し、約2トンの岩石を採取した。

下部地殻(超苦鉄質岩)に貫入した花崗岩質マグマとその周囲の加水作用を被った反応帯。
これは、地殻がマグマと反応し、流体を取り込んで固定化したプロセスを示している。
この露頭から、マグマから放出された流体の量とその動きを解析することができる。(Uno et al., 2017. LITHOS.)