絶対重力測定とGNSS観測による南極氷床変動とGIAの研究(2)

課題番号:AP0943
代表者:土井 浩一郎(国立極地研究所)
実施期間(隊次):63次

衛星重力ミッションと呼ばれる人工衛星による観測では、南極半島周辺の西南極で急激な氷床の融解に伴う質量の減少が検出されています。この融けた南極の氷は海に流れ込み、海水質量を増加させ、世界各地の海面の上昇を引き起こします。このような地球表層の水の移動は、固体地球も変形させることがわかっています。この変形は、過去から現在に至る南極氷床質量の増減に伴って起きるため、氷河性アイソスタシー調整(Glacial Isostatic Adjustment:GIA)と呼ばれます。GIAで生じる地面の変形量はわずかであるものの、絶対重力測定やGNSS(Global Navigation Satellite System)といった最先端の観測技術を用いて繰り返し観測することにより検出することができます。

このプロジェクトでは昭和基地とその周辺の露岩域と呼ばれる雪や氷のない岩場において絶対重力測定とGNSS観測を同時に行い、GIAに伴う重力と地面の高さの変化の検出をめざします。重力変化と高さ変化を同時に求めることにより、固体地球の変形を特徴づける内部の構造や性質に関するパラメータを推定することができると考えています。同様の観測を2018年(59次隊)でも実施しており、今回が2回目になります。その時は昭和基地と6か所の露岩域で絶対重力測定とGNSS測定を実施しましたので、今回も同じ場所で観測できれば、生じた変化がわかります。

野外での絶対重力測定

昭和基地での絶対重力測定