南大洋・南極大陸斜面接合海域における循環流場の観測

課題番号:AP0930
代表者:北出 裕二郎(東京海洋大学)
実施期間(隊次):61次

南極底層水は、大西洋北部で沈み込んで南大洋へ達した南極周極深層水が、南極大陸縁辺で冬季にできた陸棚上の超低温の高密度棚水と混ざって形成される。ビンセネス湾は、近年、南極底層水の生成が確認された海域で、53次隊以降、海鷹丸が毎年実施している東経110°モニタリング観測線(基本観測(海洋物理化学))の南端に位置する。

2014年1月の観測では、南極底層水の低塩化に加えて昇温が認められ、同時に1500~3000m深には幾層かの低塩分高酸素の貫入層が捉えられた。高密度陸棚水の低塩化や周極深層水の混合割合の増加などにより、十分に重くなれなかった水塊は中深層に貫入すると考えられ、その形成プロセスは底層水の変質と大きく係わっている可能性がある。

そこで、南大洋子午面循環の構造を明らかにし水塊変質の機構を解明するため、亜表層から深海底にわたる広い深度帯をカバーする巨大係留系による長期係留観測を実施した。回収された係留データは、海鷹丸による係留系設置回収時に実施された海洋観測データ、衛星データおよび再解析データの解析を併せて解析し、深層大循環の一端を担う南大洋における新たな循環像が明らかにされていくことになる。

係留系観測網模式図。亜表層から深海底までをカバーする係留観測網で深層、底層、循環流量をとらえる。

海鷹丸による係留系の設置風景:巨大係留系(数十台のセンサーを配備した全長約4kmの系)を南大洋に長期間設置。