南極上部対流圏・下部成層圏における先進的気球観測

課題番号:AP0931
代表者:冨川 喜弘(国立極地研究所)
実施期間(隊次):61次、62次、63次

南極では50年以上前から気球を使った観測が行われており、南極オゾンホールの発見にも貢献しています。このプロジェクトでは、これまでにない新たな2つの気球観測を実施します。

1つ目は、ゴム気球に高精度な水蒸気観測装置を吊るして飛ばす水蒸気ゾンデ観測です。高度10km以上の成層圏は水蒸気濃度が極めて低い(地表の1/10000以下)にもかかわらず、その変動が地表の気温に大きく影響することが近年わかってきました。そこで、成層圏の水蒸気濃度を高精度で長期にわたって測定するため、水蒸気ゾンデ観測を昭和基地で定期的に実施しています。現在、南極でこの観測を実施しているのは昭和基地だけです。

2つ目は、スーパープレッシャー気球観測です。スーパープレッシャー気球は、ほぼ同じ高度を1か月以上にわたって飛び続けることができる特殊な気球です。気象観測装置を吊るしたスーパープレッシャー気球を飛ばし、南極上空を周遊させることで、南極大陸上や周辺の様々な場所における気象データを取得します。そのデータを用いることで、気候モデルによる将来予測や南極周辺の天気予報を改善することができると期待されています。現在、気球と観測装置の開発を進めており、63次夏隊(2022年1月頃)での観測実施を目指しています。

放球直前の水蒸気ゾンデ

極地研で試験中のスーパープレッシャー気球