東南極の大気・氷床表面に現れる温暖化の影響の検出とメカニズムの解明

課題番号:AP0933
代表者:平沢 尚彦(国立極地研究所)
実施期間(隊次):61次、62次、63次

温暖化が極度に、十分に進むと、最終的には南極氷床の質量が減るのは明らかです。それは、海水面の上昇を促します。しかし、これまでの気候システムの中でバランスしていた氷床をめぐる水の出入りが、温暖化の開始直後において、すなわちそれは現在なのですが、どのように推移するのかは簡単には結論できません。温暖化によって大気中の水蒸気量は増え、降水量が増えると考えられています。ということは、南極氷床にはこれまで以上の水が入ってくるということです。昇温による融解流出の増加や氷床流動の加速による氷山流出の増加は氷床をより速く減らそうとします。これらの差し引きが南極氷床の質量を決めます。

日本の観測隊が観測する東南極氷床は、対をなす西南極の7倍もの体積を持ちます。南極氷床の本体ともいえる、その東南極の温暖化は未だ明瞭になっていません。しかし、温暖化の兆候が全くないわけではありません。東南極の気候が今度どのように変化していくのかは、私たちが将来を覚悟し、準備するために重要な指標だと思われます。

本プロジェクトは、南極氷床や南大洋を可能な限り広くカバーし、現地の実測データを取得します。特に冬の南極氷床上のゾンデ観測や数10年間の継続を目指す自動気象観測(AWS)は、国際的にも貴重なデータを取得し続けています。これらの観測によって、東南極の変化をいち早く検出し、そのメカニズムを明らかにしようとしています。

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