トッテン・ビンセネス海域の南極大陸斜面と外洋接合領域における循環流場の解明

課題番号:AP0941
代表者:北出 裕二郎(東京海洋大学)
実施期間(隊次):62次、63次

近年、トッテン海域の氷床の底面融解が急速に進んでいると指摘されています。底層水の昇温・低塩化機構の解明に加え、深層底層水が南大洋子午面循環にどのように取り込まれるのかを定量的に評価するには、船舶によるCTD観測や短い係留システムでは観測不可能であり、亜表層から深海底にわたる広い深度帯をカバーする長期係留観測が必要です。本プロジェクトは、これまでビンセネス湾沖で実施してきた集中観測域を東へと拡張し、トッテン海域(東経115~120度)における低塩分水の年間を通した外洋への流出経路を捉え、南極底層水低塩化への影響を評価するため係留観測を実施するものです。多数の流速計とメモリー式CTDで構成された係留系をビンセネス湾沖からトッテン海域に配置します。

観測は、係留系の設置回収と船舶からの水温塩分観測で構成され、62次隊で61次に設置した係留系を回収し、63次隊では新たに3系の係留系を南緯64度の東西測線に設置し、大陸斜面域と外洋の接合領域の循環構造を捉えます。係留系の設置回収時には、これまでと同様にCTDによる水路観測が実施され、水塊の特性や変質した水塊の分布を調べることになっています。特に今回新たに設置する係留系には、計15台の流速計を配置し、全深度にわたる流速構造が捉えられ、当該海域の表層から深層までの循環構造が明らかになると期待されます。