電磁波・大気電場観測が明らかにする全球雷活動と大気変動
雷放電によるAC,DC全球電流系の駆動機構と大気変動の解明

課題番号:AP0929, AP0940
代表者:佐藤 光輝(北海道大学)
実施期間(隊次):61次、62次、63次

主に熱帯域・亜熱帯域で発生する雷放電は、1秒間に約50発の頻度で発生しています。これらの雷放電は、数Hzから数100MHzと広い周波数帯域に強力な電磁波を放射しますが、中でも1-50Hzの極低周波帯(ELF: Extremely Low Frequency)の電磁波は、波長が長く減衰率も低いため長距離伝搬するとともに、地表と高度80km付近の電離層で閉じた空間(導波管)で共鳴状態に陥るため、シューマン共鳴と呼ばれています。また活発な積乱雲では、雷放電によって1発あたり最大数100kAの電流が流れると共に、電気を帯びた雨粒が地表に降ることによって電気を運びます。これらが電池の役割を果たし、地表-電離層の間に3次元の電流回路(グローバルサーキット)を形成します。

昭和基地でELF波動を連続的に波形観測することで、世界中の雷活動を定常監視することができ、また、大気中の鉛直電場を観測することで、グローバルサーキットの活動度を調べることができます。これらによって、雷放電の世界的な活動度の短期的・長期的変化を調べるとともに、雷放電や積乱雲と気象・気候変動とがどのように関係しているかを明らかにすることが本プロジェクトの目的です。

雷放電が放射する電磁波の伝搬と、雷・降雨活動が駆動する全球電流系の模式図

(左)雷放電が放射するELF波動を観測するための磁力計、(右)グローバルサーキットでつくられる大気電場を計測するためのフィールドミルセンサ