しらせ航路上及びリュツォ・ホルム湾の海氷・海洋物理観測

課題番号:AMP0904
代表者:牛尾 収輝(国立極地研究所)

南極大陸周辺の海には、海水が凍った海氷が形成されています。海氷は冬に厚くなって、夏に融けることを繰り返しながら、また風や海流の力を受けて漂流しています。この海氷域の変動を通して南極域や地球規模の気候形成に果たす海氷の役割を明らかにするために、海氷の観測が不可欠です。面的に海氷がどのように広がっているかは、人工衛星からおおよそ知ることができますが、海洋や大気の環境との関係を理解するうえで、海氷の厚さの情報はたいへん重要で、現地で氷の厚さを計測しています。

海氷の観測として、「しらせ」船上ではセンサを用いたり、カメラによる撮影や一定時間毎に目視観測したりしています。昭和基地近くの海氷上ではスノーモービルで移動しながらデータ・試料を取得します。採取した海氷試料は冷凍で国内へ持ち帰り、低温室で解析することによって、海氷上に降り積もる雪が海氷の構造にどのような影響を与えているかを調べます。また、より広い海域のデータを得るために、ヘリコプターからも観測します。さらに、「しらせ」に取り付けた加速度・歪計からのデータを解析することで、氷海を進む船そのものをセンサに見立てて、海氷状態を探る観測、航路上の海水の流向流速観測も続けています。毎年、ほぼ同じ夏期に、同じ海域の海氷観測データを取得することによって、海氷域の年々変化の特徴を明らかにして、その変動機構の理解に役立てます。

「しらせ」の舷側に取り付けた海氷厚センサ

昭和基地定着氷上の観測

ヘリコプターによる海氷厚計測