デンマーク第4の都市であるオールボー(写真1)は、デンマークのなかで最も多くのグリーンランド人が住む街として知られています(グリーンランド全国紙Sermitsiaqの2018年3月7日付電子版記事:Rekordmange grønlændere bor i Danmark)(写真2)。グリーンランドとの物流の要となる港(グリーンランド・ハウン)の存在や、世界最大の水産物供給会社の一つロイヤル・グリーンランドのヘッドクォーターが置かれるなど、産業面でもグリーンランドとの係わりが強い街です。そんなデンマークでありながらグリーンランドを沢山感じられる地で私は、ArCS若手派遣の支援を受けて、2017年3月20日から2018年1月31日までの約10か月間、在外研究を遂行する機会に恵まれました。
Arctic Observing Summit(AOS)が、2018年6月24日から3日間、スイスのダボス国際会議場で開催されました。
本派遣事業により2017年7~9月にロシア北東部のサハ共和国に滞在し、現地調査および学術交流を行いました。
北極域の環境は急激に変化しており、現地および全球の生態系・人々の生活への影響が危惧されています。ロシアには広大なタイガ林が広がっていますが、こうした森林は地球規模の二酸化炭素の固定・排出に大きく関係しています。特に北東シベリアのような寒冷な地域では、膨大な炭素が有機物として地中に蓄積されており、気温の上昇に伴って二酸化炭素の排出源になることが危惧されています。私の研究では地中の炭素循環に目を向け、土壌環境や生物相の変化が土壌および森林全体の炭素循環にどのように影響するのかを明らかにしています。派遣中は北緯60~70度のタイガ林で、土壌炭素量や土壌呼吸量などの測定を行いました。
2018年5月20日(日)~24日(木)に千葉県・幕張メッセで行われた日本地球惑星科学連合(JpGU)2018年大会においてブース出展とトークイベントを行い、ArCSプロジェクトに関する情報発信を行いました。
ArCS若手研究者海外派遣事業の助成を受け、2018年1月29日から2週間、米国スクリップス海洋研究所/海洋物理グループ(受入研究者:Prof. Fiamma Straneo)を訪問しました。Straneo教授は、氷河が流入するフィヨルドの海洋構造に注目し、氷河の末端変動メカニズムについて、海洋物理の視点から先駆的な研究を行っています。訪問の目的は、私達が開発・実用化した観測技術を、Straneo教授と海洋物理グループの研究者らに紹介し、また観測で得た海洋物理データについて意見交換を行うことでした。私達が開発した観測技術は、観測が難しいカービング氷河(海や湖に流入する氷河)と海洋の境界において、氷と接する海の水温・塩分変化をモニタリングするというものです。氷が海中で融けると、周囲の海水温、塩分が低下します。そのため、氷と接する海の水温・塩分の変化は、氷河が夏の間、海水中でどの程度融けているかを知る手掛かりになります。
第2回若手研究者海外派遣報告会が、2018年5月9日にJAMSTEC横浜研究所で行われました。
平成30年度プロジェクト全体会合をJAMSTEC横浜研究所 三好記念講堂ならびにホワイエにて開催し、ArCS関係者など約100名が参加しました。
今回の全体会合は2018年5月9日(水)と10日(木)の2日間にわたって開催され、1日目には、各実施メニューのPIが前年度の活動・成果の発表と今年度の実施計画の説明を行いました。
北極域研究推進プロジェクトArCSは、日本が北極問題の解決に科学をもって貢献し、日本の北極政策の骨子である「北極域での秩序ある持続可能な発展に日本が主導力を発揮する」ことへの裏付けを用意するために、国際共同研究の推進、北極域における研究・観測拠点の整備、若手研究者および専門家の北極関連研究機関あるいは会議への派遣という3つの柱から成っています。特に、国際共同研究の推進には、自然科学だけではなく、今後起こり得る自然環境の変化が世界の経済や北極域住民に与えるインパクトを研究するべく、人文・社会科学も含まれています。
ここまで4日連続で順調にサンプリングできたので、もともと予備日に当てられていた今日はフリータイムになりました。北緯62度のサルイットの「日の出」を見たくて朝4時に早起きしたのですが、あいにくの曇り空で小雨も降ってきて、折からの南西風に吹かれた雨粒は、ソロモン諸島から来た私には氷のように冷たく感じられました。急いでジャケットの袖を下ろそうとしたら、足元の草が動きました。
サルイットの地図と空中写真を見ながら、サルイット谷のほぼ中央に沿って流れる川のあることに気づきました。地衣類は、光と水があって、固い基物表面があれば、どこにでも生えることができます。たとえば川岸の岩などがそういう場所で、そういう所には面白い地衣類がいるのではないかと期待してしまいます。それを確かめるにはまず行くことです、百聞は一見にしかず。