ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

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私たちの研究グループは2016年、2017年に引き続き東グリーンランド深層氷床掘削プロジェクト(East GRIP)に参加してきました。East GRIPはデンマークをはじめとする各国が参加し、グリーンランドの氷床や気候変動を明らかにすることを目的とした国際的なプロジェクトです。

テーマ6の生物多様性課題では、ベーリング海北部セントローレンス島で海鳥の生態に関する調査を実施しています。2016年に調査を開始して3年目。今年も7月中旬〜8月下旬まで極地研、北海道大学水産科学院、アラスカ大学フェアバンクス校から5名の研究者が入れ替わりながら現地エスキモーのガイドとともに調査を進めました。私自身は7月31日から8月18日までの旅程で野外調査に参加しました。

ArCSテーマ4では、北極海で進行する海洋酸性化が炭酸カルシウムの殻を持つプランクトンに与える影響を評価する研究の一環として、太平洋側北極海で係留系を用いた定点観測を行っています。2018年8月に、一年間水中の粒子を捕集するセジメントトラップとpHや海氷厚などを計測するセンサーを伴う海底固定型係留系を設置するため、韓国極地研究所の砕氷船ARAON(アラオン)号北極海航海(Leg 1)に乗船しました。

ケープ・バラノバ基地は、ロシア北極海のセヴェルナヤ・ゼムリャ諸島ボリシェヴィク島(79°18'N 101°48'E)に位置し、ロシア北極・南極研究所(AARI: Arctic and Antarctic Research Institute)が維持運用する観測基地です。1980年代に開設され、1990年代に一旦閉鎖されましたが、2013年8月に再開されました。国立極地研究所や東京大学をはじめとする日本の研究機関とAARIとによる大気分野の共同観測を開始するにあたり、設備の視察も兼ねて2017年11月に現地を訪問しました。

この度の台風21号により、被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

2018年9月4日、台風21号が「非常に強い」勢力を保ったまま、四国地方に上陸しました。この勢力で上陸したのは25年ぶりだそうです。四国・中国・近畿地方など各地に甚大な被害をもたらしたこの台風は、北日本をかすめながら日本海を北上します。北日本は台風に遭遇するのは非常に稀なため、風水害の備えという観点から言うと手薄かもしれません。正確な台風の進路予想は日本全国どこにいても重要です。

7月29日にカナック村にて、「環境変動が生活に与える影響」に関するワークショップを開きました。このワークショップの目的は、村の人々に我々の研究取り組みを伝え、氷河や海洋の変動について知ってもらうと同時に、村人が感じる地域の環境変化とその生活へのインパクトについて話を聞き、情報交換を行うことです。2016年から始まり、今年で3年目となる今回のワークショップでは、北海道大学や京都大学、またカルガリー大学から考古学の研究者らも参加しました。私たちは、カナック氷帽や河川の流量観測、Bowdoinフィヨルドでの海洋観測、そしてシオラパルクでの地滑り調査の結果を紹介しました。

グリーンランド氷床の質量損失に伴う海水準上昇は我々人類の喫緊の課題です。EGRIP深層コア掘削プロジェクトはデンマークをはじめとする様々な国が参加する国際協同プロジェクトで、北東グリーンランド氷流(Northeast Greenland Ice Stream; NEGIS)と呼ばれる、氷床流動が非常に速い地点で深層コア掘削を行っています。氷流はグリーンランド氷床の質量損失に大きく影響します。