海洋研究開発機構(JAMSTEC)が保有する海洋地球研究船「みらい」は、北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)の活動として、2022年8月12日〜9月29日に20回目の北極海観測航海を実施します。観測内容は主に戦略目標①「先進的な観測システムを活用した北極環境変化の実態把握」の研究課題に関連するものですが、研究成果やデータの発信、他の研究課題との連携を通じて、戦略目標②「気象気候予測の高度化」、戦略目標③「北極域における自然環境の変化が人間社会に与える影響の評価」、戦略目標④「北極域の持続可能な利用のための研究成果の社会実装の試行・法政策的対応」の達成にも貢献します。
この航海では、国際連携による北極海同時広域観測Synoptic Arctic Survey(SAS)も実施します。
2022年度みらい航海概要
北極海は「海氷の減少」に代表されるように、地球温暖化・海洋温暖化のシグナルがいち早く現れる海域です。本航海では、その中でも特に劇的な環境変化の最中にある、北極海のゲートウェイ「太平洋側北極海」において、CTD/採水観測、係留系/セディメントトラップの回収・設置、海氷-波浪相互作用の観測、大気・気象観測、動・植物プランクトン採取、堆積物採取といった自然科学的な調査に加え、世界でも観測例が少ない北極海の海洋プラスチック汚染を評価します。また、本航海はHAPPI Cruise(Holocene Arctic Palaeoclimatology and Palaeoceanography Investigation cruise:完新世北極海調査航海)を愛称として、大規模な海底堆積物コアを採取して、2000年スケールの地球環境の変化の復元研究を行います。これらの調査によって海洋循環や、大気・海洋化学物質循環、海洋酸性化や環境汚染の進行状況、海洋生態系の変化などを、様々な時間スケールから明らかにすることを目指した統合的な観測データセットが作られます。
20回目となる節目の「みらい」の北極海観測。これまでの歴史的な調査データと合わせて、北極環境はこれまでいかに変化し、そしてこれからどう変わりゆくのか?様々な科学的疑問を明らかにするための重要な研究データの取得が期待されます。さらに、次世代の海洋観測プラットフォームとして期待されている、海氷下の環境をも自動観測する「極域用海中観測ドローン」の運用試験も行われます。国際的な観測チームが加わり、盛りだくさんの研究が行われる航海です。
調査研究実施内容(ArCS II関連)
北極海同時広域観測 Synoptic Arctic Survey(SAS)計画とは
SASはこれまで北極海では行われてこなかった複数船舶による同時かつ広域の高精度観測を実施する計画であり、海洋地球研究船「みらい」は太平洋側北極海の観測を担当します。SASの実施結果は北極海広域での環境・気候変化をとらえるための、さらに将来の環境・気候を予測するための基礎データとなることが期待されています。
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