ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

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昨年2月から11月にかけて、中央ヤクーチア(サハ共和国)の環境と民族文化、地球温暖化の影響について紹介する企画展「融ける大地温暖化するシベリア・中央ヤクーチア」を開催しました。この展示は、ArCSテーマ7(東北大グループ)の研究成果を中心に、東北大学東北アジア研究センター、北海道立北方民族博物館の協力で製作し、同博物館で開催された企画展を出発点としています。その後、展示の趣旨に賛同していただいた博物館のご協力により、移動展として巡回することになりました。

デンマークのコペンハーゲンにおいて開催されたIce Core Analysis Techniques (ICAT) PhD school-2019 および8th International Ice Drill Symposiumに参加しました。どちらも私の研究対象であるアイスコアに関連したものです。アイスコアはグリーンランド氷床や南極氷床、氷河を掘削して得られる氷で、その中に含まれる気体や化学成分などから得られる情報は古気候・古環境復元に役立ちます。

2019年1215日に、グリーンランドの首都ヌークにおいて、Greenland Science Weekが開催されました。このシンポジウムは「北極域の科学」と「グリーンランド社会」を橋渡しする目的で開かれ、グリーンランドで活動する国内外の研究者や現地に暮らす人々が参加しました。ArCSから5名が参加し、ArCSテーマ2グリーンランドにおける氷床・氷河・海洋・環境変動」で実施している、グリーンランド北西部カナック地域における氷河・海洋の研究活動を紹介しました。

北極域研究推進プロジェクト(ArCS)の第5回目となる公開講演会を2019年12月15日(日)に東京・本郷の伊藤謝恩ホールで開催しました。今回の講演会は、「北極研究から見えてきたもの」というタイトルのもと、ArCSで5年間にあげてきた成果を中心に、SDGsを中核とする国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に対応する3つのラウンドテーブルにまとめました。また、受付横では、話題提供者のひとりである木村元氏(JAMSTEC)らが製作した北極ボードゲーム「The Arctic」の展示を行いました。

2019年1225日にグリーンランドのヌークを訪れ、グリーンランドサイエンスウィーク(125日)のパブリックアウトリーチデーで発表を行うとともに、グリーンランド天然資源研究所(Greenland Institute of Natural ResourcesGINRを訪問しました。GINRArCS国際連携拠点として、グリーンランドにおける日本の観測・研究支援を行っています。そのGINRに設置されているグリーンランド気候研究センターは、グリーンランドの海洋生態系と人間社会に対する気候変動の影響を評価する点で、私たちの研究グループと似た戦略目標を持っています。同センターとの今後の研究連携を目指し、私たちがグリーンランドで行っている観測活動や研究成果を紹介するセミナー発表を行いました。

11月29日と30日にヤクーツク市とチャラプチャ郡カヤフシット村で調査報告展示と冊子「永久凍土と文化」(環境教育教材)の贈呈会を行いました。

北極域グリーンランド氷床や南極氷床は過去に積もった雪が氷となって保存されたものであり、氷床を掘削して、アイスコア(円柱状の氷)を分析することで、過去数十万年前までの地球環境を復元することができます。私は今年度からアイスコアに含まれる空気成分と雪氷の物理的特性に着目して、極域の氷床を対象にしたアイスコアの研究を始めました。そんな中2019年9月23~28日にかけてデンマークのコペンハーゲンで、これからのアイスコア研究を担う若手の教育を目的としたIce Core Analysis Techniques (ICAT)PhD school-2019が開催されました。また、9月30日~10月3日にはアイスコア掘削に関するInternational Ice Drill Symposium(IDS)が開催されました。そこで、アイスコア研究への理解を深め今後の研究を進めていくための下地を固めることを目的としてICAT、IDSに参加しました。

”Arctic Greening”という言葉をご存知ですか?気温上昇などにともない、北極圏に生える植物の背丈が高くなり、宇宙などから見たときに、過去よりもより緑色になって見える(Greening)ことで、近年、北極圏で見られている現象です。