ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

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ArCSテーマ7の下で神戸大学極域極力研究センター(PCRC)を中心に行われてきた北極国際法政策に関する国際共同研究の総括と今後の研究課題を明らかにすることを目的に、12月2日からタスマニア・ホバートで開催される第12回極域法国際シンポジウムにおいて特別セッションを設置して研究成果を発表しつつ、世界中の極域研究者からフィードバックを得ます。

私は2019年7月にArCS若手研究者派遣プログラムの支援を受けてアラスカのミドルトン島に行き、海鳥のプラスチック誤飲に関する研究を、同島で繁殖するミツユビカモメを対象として行いました。本研究はInstitute of Seabird Research and Conservation(ISRC)との共同研究です。

海鳥は鳥類の中でも最も保全の必要性が高いグループです。特に1960年以降、海鳥によるプラスチック誤飲の報告が相次いでおり、海洋プラスチック汚染に対して脆弱であることがわかってきています。たとえば、プラスチック誤飲による影響として消化器系の物理的な損傷、消化効率の低下および有毒化学物質の放出などがあげられており、重大な問題となっています。この問題を解決するためには、まずプラスチック誤飲を引き起こすメカニズムを理解することが重要であり、その上でこれを軽減する解決策をみつけていく必要があります。

スウェーデン・ストックホルムにあるスウェーデンのEnvironmental Protection Agencyの一室で9月5日から6日に開催されました。近代的なビルでしたが、所長によると数ヶ月前にこのビルに引っ越し、約500名が勤務しているとのことでした。会議には北極国も含め14カ国から45名程の出席者がありました。今回はスウェーデンが議長となってから初めての会合でした。

係留気球大気観測のテストを西部北太平洋上で実施しました。この観測は北極海上で大気物質の上空と地表付近の違いを観測するために実施します。また、同時期に実施されるドイツ砕氷船を用いたMOSAiCプロジェクトでも同様の係留気球観測が実施予定のため、今航のみらいでの結果と合わせて解析することで、北極の広域での大気物質の高度を含めた、データの取得が可能になります。

カナック氷河での観測と、ボードインフィヨルドでの海洋調査を終えたあと、私たちはイングレフィールドフィヨルドで調査をするため、8月12日にケケッタ村を訪れました。ケケッタ村は、イングレフィールドフィヨルドの奥に位置する小さな村です。イングレフィールドフィヨルドには、Tracy氷河やHeilprin氷河に代表される、流れの速い氷河が流入しています。

ArCSテーマ2「グリーンランドにおける氷床・氷河・海洋・環境変動」では、氷河氷床の変動と海洋との相互作用に着目し、グリーンランド北西部カナック村周辺にて2016年より毎年夏季に現地観測を実施しています。今年2019年7月1~15日には、カナック村から約30 km北東に位置し、海洋に流入しているBowdoin氷河にて観測を行いました。グリーンランド北西部はアクセスが難しく、現地観測データが乏しい状況にあります。さらにBowdoin氷河のような海洋に流入する氷河では、氷山やクレバスが多く観測が容易ではありません。このような背景から、私たちは氷河で継続的に観測を行うことで、近年の氷河変動やそのメカニズムを明らかにすることを目的としています。

テーマ6の生物多様性課題では、ベーリング海北部セントローレンス島で海鳥の生態に関する調査を実施しています。2016年に調査を開始して4年目。今年は6月中旬に調査を開始し、8月中旬まで断続的に極地研とアラスカ大学フェアバンクス校の研究者が入れ替わりながら現地エスキモーのガイドとともに調査を進めました。私自身は6月19日から7月6日までの旅程で野外調査に参加しました。

2019年3月14日から4月13日までArCS若手研究者派遣支援プロジェクトの支援を受け、イタリアとロシアを訪問しました。私が本プロジェクトで支援していただいたのは2回目です。1回目は2017年にロシア連邦・サハ共和国を訪問し、ホッキョクグマ研究プロジェクトを立ち上げました。今回の派遣では、ロシアでのホッキョクグマ研究のさらなる発展に向けて、情報発信と研究打ち合わせを主な柱として活動しました。

5月18日から6月1日まで、ArCS若手研究者海外派遣支援事業の下でアラスカへ行ってきました。本派遣の研究目的は海氷の消長に伴う海洋の物質循環と生態系の関係を明らかにすることです。海氷は栄養分などの物質を豊富に含んでいます。春や夏に海氷が融け、それらが海に供給されると、植物プランクトンの増殖などに大きく影響する可能性があります。しかし、海氷から海洋への物質供給と海洋の生物生産との関係は、まだ良くわかっていません。また、海氷に含まれる栄養分についても未知の部分が多くあります。栄養分の起源は海底の堆積物と考えられていますが、これらが「いつ・どこで・どのようにして」海氷に取り込まれるのかは全く理解されていません。私の研究ではこれらを明らかにしたいのです。