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グリーンランド天然資源研究所訪問〜アザラシの専門家から学んだ様々な分析手法〜

若手人材海外派遣プログラム参加者:2022年度第1回短期派遣
小川 萌日香(北海道大学)

私は今回、若手派遣制度を活用し、グリーンランドのヌークにある研究所、グリーンランド天然資源研究所(以下GINR)に1か月間滞在してきました。GINRはグリーンランドの陸域および海域の生態系を対象に幅広く調査を展開している研究機関です。今回の派遣の一番の目的は、私の博士論文研究で必要な分析手法を学ぶことでした。具体的には、アザラシの胃内容物を分析することで、アザラシの食性を解析する方法と、アザラシの犬歯を使って年齢を査定する方法です。以下に分析内容について紹介したいと思います。

胃内容物分析は、GINRで開催された胃内容物分析のワークショップに参加して、その方法を学びました。今回は、私の研究対象種でもあるワモンアザラシという種類の胃を使って行いました(写真1)。グリーンランド南部で採取されたワモンアザラシです。プランクトンが大量に入っていたり、魚の耳石が入っていたりと、食性にも個性が見られておもしろいです。プランクトンの数を1匹ずつ数えたり、耳石を全て拾い集めて数えたりするので、とても時間がかかる作業です。今回分析したサンプルからは、シシャモがたくさん出てきました。一方私がグリーンランド北西部に位置するカナック村で採取したサンプルからはホッキョクダラが大量に発見されていて、同じグリーンランドでも南北で食性が異なるのだな、と感じました。

(写真1)派遣先で行ったアザラシの胃内容物分析の様子。ワモンアザラシという種類のアザラシの胃を調べています。

年齢査定は薬剤で柔らかくした犬歯を薄くスライスし、染色することで見える年輪のような層を数えて行います(写真2)。この個体はなんと44歳でした!アザラシだけでなく、ほとんどの哺乳類でこのように犬歯を使って年齢査定ができます。薄くスライスした犬歯をスライドガラスの上に並べる作業がとても難しかったです…(写真3)

(写真2)アザラシの年齢査定に使用した犬歯。年輪のようにうっすら見える層を数えて、年齢を調べます。
(写真3)薄くスライスした犬歯をスライドに並べている様子

分析中だけでなく、放課後やお昼の時間などにもGINRに所属する研究者の方々とお互いの研究内容についてお話ししたりなど、交流できる機会がたくさんあり、とても有意義で楽しい時間でした。今回渡航したのは11〜12月の冬の時期だったので、夜には綺麗なオーロラがたくさんみえました(写真4)。初めてオーロラを見た時は、外の寒さも忘れてひたすら空を眺めていました。

(写真4)グリーンランドでみたオーロラ。みるみる色や形が変わっていく様子に圧倒されました。

今回の渡航では、グリーンランドでアザラシの研究をしている専門家の方々にたくさんお話を聞くことができて、今後の自身の研究にも活用できる技術や知見をたくさん吸収することができました。この経験を今後の活動にも存分に生かしていきたいと思います!

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