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アラスカのタク氷河観測およびデータ解析

若手人材海外派遣プログラム参加者:2023年度第1回短期派遣
張 佳晏(北海道大学)

タク氷河は、後退を続けてきた多くの氷河とは異なり、2015年まで前進が観測されてきました。そして、多くの氷河が硬い基盤上を流動するのに対し、氷河底に大量の柔らかい堆積物を有し、それらの堆積物を削りながら前進してきたユニークな氷河です。しかし最近、タク氷河がついに後退し始めるのではないか、と示唆されています。この氷河は、過去に5回ほど、ゆっくりとした前進と急速な後退を繰り返してきました。このような前進と後退のサイクルはTidewater Glacier Cycle(TGC)と呼ばれ、気候変動に左右されないとされています。

(写真1)ドローン(バックアップ用)のテストフライ

しかし、TGCは果たして気候変動から全く影響を受けないのでしょうか。今、タク氷河はまさに氷河前進から後退に移行する段階にあります。したがって、タク氷河の末端変動の特性を解明することにより、それに対する手がかりをつかめるかもしれません。そのため、私は今回の派遣で、約1カ月間アラスカ大学南東校を訪れて、Jason Amundson准教授らと共同研究を実施してきました。現地では、まず約1週間の野外調査を実施しました。実際にタク氷河に行き、UAVを飛行させて氷河表面標高や現地地形のデータを取得したほか、氷河上を歩き氷レーダーを用いて、氷河の厚さと氷河底地形を観測しました。タク氷河は私にとって初めての氷河であり、夜遅くまで日差しに美しく輝く氷河に感動しました。

(写真2)ヘリコプターから見たタク氷河。氷河末端は手前に向かってローブ状に広がる。
(写真3)氷レーダー測定の様子

野外調査の後に、私は続けてアラスカ大学南東校に滞在し、Amundson准教授らと観測データの共同解析を進めました。UAVデータは、衛星データより解像度が高いため、氷河末端の変動、表面標高変化や地形の変化をより精細に捉えることができます。派遣前に数カ月にわたって解析した人工衛星データとの比較も重要な研究課題となります。滞在中は大学の一角にある会議室を使わせてもらい、データ解析を進めながら、Amundson准教授らと意見交換をしました。そして、現地の博士研究員や学生とも議論する機会があり、スライドなどを使いながら初期解析結果を紹介したり、お互いのこれまでの研究背景について理解を深めることもできました。

(写真4)ドローン測量の準備。氷河上のデポ地にて。
(写真5)現地研究者らと初期解析結果を共有

週末には、大学の位置するジュノーという町周辺の山にハイキングへ行きました。アラスカの山は森が深く、しかしいざ森林限界を超えると視界が広がって、氷河の名残りの風景が一気に姿を見せてくれます。このような充実した環境の中で共同研究を続け、タク氷河の変動特性に関してさらに掘り下げていきたいと考えています。

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