開催報告 | ArCS II 北極域研究加速プロジェクト https://www.nipr.ac.jp/arcs2 北極域に関する先進的・学際的研究を推進し、その社会実装を目指します Thu, 09 Jan 2025 06:44:23 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.5 第4回ArCS II公開講演会『つながってる!?わたしと北極』を開催しました https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/seminar241201/ Thu, 09 Jan 2025 06:11:39 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13647 2024年12月1日(日)に、第4回ArCS II公開講演会『つながってる!?わたしと北極』を、東京お台場の日本科学未来館・未来館ホールにて開催しました。公開講演会の参加者は86名で、20代以下が3割を占め、前回までの公 […]

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2024年12月1日(日)に、第4回ArCS II公開講演会『つながってる!?わたしと北極』を、東京お台場の日本科学未来館・未来館ホールにて開催しました。公開講演会の参加者は86名で、20代以下が3割を占め、前回までの公開講演会に引き続き若年層の参加が目立ちました。教育やメディア関係者の参加も2割弱ありました。


第1部は「つながりを探る」と題した話題提供パートで、佐藤 友徳氏(北海道大学)、小谷 亜由美氏(名古屋大学)、上野 洋路氏(北海道大学)が、日本と北極とのつながりを大気・陸・海の視点から紹介しました。気象予報士の斉田 季実治氏に司会・進行を務めていただきました。

佐藤氏は「北極と日本をつなぐ大気のながれ」と題して、大気を通した日本と北極とのつながりを紹介しました。北極の温暖化により、高緯度で高温を記録する日の増加が心配されていること、シベリアの森林火災由来の煙が日本まで長距離運ばれてきていること、日本を含む東アジアで降水が強まる可能性があること、日本への渡り鳥にも影響を与えていそうなことなど、内容は多岐にわたりました。参加者からは、「なぜ南極より北極の方が温暖化が激しいのでしょうか。」「偏西風が蛇行する理由は温暖化なのでしょうか。」などの質問が出ました。

小谷氏は「日本とどう違う?シベリアの森林で起こっていること」と題して、東シベリアの永久凍土地域に広がる森林について日本と比較しながら紹介しました。年平均気温が低く降水量が少ないシベリアに森林が広がるのは永久凍土のお陰であること、森林は自身や土壌に炭素を貯蔵し、水の循環を通して気温を調整していること、近年の環境変化によって森林火災や森林の枯死が増加し、大気や海洋にも影響を与えていることをお話しました。参加者からは、「シベリアの森林にはどのような生き物がいますか。」「微生物が地中の有機物を分解して排出するCO2と植物が吸収するCO2はどちらが多いのでしょうか。」などの質問が出ました。

上野氏は「海でつながる日本と北極」と題して、海の視点から日本と北極とのつながりを紹介しました。1980年代以降、北極海の海氷面積や海氷厚は減少していますが、北極海が「亜寒帯化」することで、北極海の生態系を支える植物プランクトンの増殖や、食卓と直結する漁業へ影響がでていることをお話しました。また、学部生・院生が参加した2023年度おしょろ丸北極航海についても紹介しました。参加者からは、「北極と南極の海洋調査の違いはありますか。」「プランクトンの大増殖が2回起こると、プランクトンの総量は増えるのですか。」などの質問が出ました。

第2部は「つながりを感じる」と題したパネルディスカッションで、ファシリテーターの斉田氏、パネリストの佐藤氏、小谷氏、上野氏の4人が登壇しました。まずは、斉田氏から「北極圏が鍵を握る『冬の天気予報』と『宇宙天気』」と題して、天気予報と宇宙の視点から日本と北極のつながりを紹介しました。「北極振動」が日本の異常気象の要因の一つであること、この冬の天候の予報、文明進化型の宇宙天気災害やその備えの必要性などについてお話しました。参加者からは、「斉田さんの考えと気象庁の予報が違うことはありますか。」「宇宙天気予報が実用化したら、どんな対策をすればよいでしょうか。」などの質問が出ました。

後半は、参加者から事前に寄せられた質問や会場からの質問に答えながら、日本と北極とのつながりや北極域研究について理解を深めていきました。「森林火災による大気汚染の予報は可能でしょうか。」「実際に北極に出向いて観測する必要性や現地での研究活動・生活の様子を教えてください。」「北極圏には国家が存在しますが、研究ではどのような国際連携がなされていますか。」「北極について深く知りたい場合のお勧めウェブサイトなどを教えてください。」「これからどのような北極の研究を進めてみたいですか。」など、多岐にわたる質問が途切れることなく出て、登壇者と参加者が一体となった活気のある時間となりました。

参加者からは、「専門的な知識もありつつ、わかりやすい説明でした。楽しくてあっという間の時間でした。」「わたしと北極、つながっていると感じることができました。」「北極の研究は大切だと思います。今後の発展、進展に大きな期待を持ちました。」「大人からだけでなく子供からの質問が活発でよい会だなと思いました。」「極地域のことを知る貴重な機会でした。是非今後も何かしらの形でこのような活動を継続していただきたいです。」などの感想が寄せられ、参加者の北極や地球温暖化への興味・関心をさらに引き出すことができました。

 

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西堀榮三郎記念探検の殿堂開館30周年記念展「地球温暖化―東近江市から考える北極の環境変化」開催報告 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/nishibori2024/ Tue, 07 Jan 2025 02:16:50 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13617 西堀榮三郎記念探検の殿堂開館30周年記念として、2024年7月10日(水)~10月6日(日)に、企画展「地球温暖化―東近江市から考える北極の環境変化」が開催されました。ArCS IIは、展示の企画・監修やイベントの実施に […]

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西堀榮三郎記念探検の殿堂開館30周年記念として、2024年7月10日(水)~10月6日(日)に、企画展「地球温暖化―東近江市から考える北極の環境変化」が開催されました。ArCS IIは、展示の企画・監修やイベントの実施に関わりました。


ArCS IIの展示では、北極と南極との違いや北極の環境変化、北極の温暖化の影響が表れやすい理由、日本の北極域研究などを紹介しました。そのほかには、東近江市や琵琶湖周辺の環境変化や「どっちがエコ?クイズ」などの身近なテーマの展示、すごろくやかるたの体験があり、ローカルからグローバルな話題まで、子供から大人までが興味を持てる企画展となりました。来場者からは、「地球規模・身近な地域を題材にしているものもあり、企画展とても面白かったです。」「気温上昇のペースが自分が感じていたよりもずっと早いということが知れました。」「小学生の方にぜひ見学をしてもらってください。」などの感想が寄せられました。

関連イベントとして、2024年7月21日(日)に、「どうなる?どうする?北極の今と未来」と題した北極ボードゲーム『The Arctic』 体験会と大石 侑香氏(神戸大学)による講演会「気候変動とシベリアのトナカイ牧畜民」を行いました。参加者からは、「気候変動の影響が最もわかりやすい形で「見える」場所が北極だと感じました。」「北極は多くの国に囲まれているので各国が協調するのが不可欠だと思いました。」「便利な生活でなく、自給自足の生活を維持できる方がよいという考え方は新しい視点でした。」などの感想が寄せられました。

2024年8月3日(土)には、東近江市出身の青木 輝夫氏(国立極地研究所)による講演会「東近江市から考える地球温暖化と北極の環境変化」を開催しました。子供の頃の愛知川(えちがわ)の思い出を導入として、グリーンランドでの研究観測の様子、地球温暖化がもたらす北極へのさまざまな影響、今後必要な議論について紹介しました。講演中には実験も行われ、子供から大人までが自然現象を理解しやすくする工夫もなされました。参加者からは、「データをもとに、裏付けのある正確な話が聞けました。全てにおいて興味深かったです。」「実験を通しての解説はわかりやすかったです。」「一人一人が理解を高め、私たちの生活を守っていかなければ、大変なことになると改めて感じました。」などの感想が寄せられました。

開催期間が夏休みを含む3ヶ月にわたり、子供から大人まで2,000人近くが訪れました。新聞やテレビなどメディアにも多く取り上げられ、30周年にふさわしく多くの人が訪れる企画展となりました。

 

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合同公開講演会「北極航路研究の最前線」報告 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2025-01-06-2/ Mon, 06 Jan 2025 06:02:23 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13601 報告者:矢吹 裕伯(国立極地研究所 北極海氷情報室) 関連課題:重点課題② ArCS II北極航路課題の成果報告会と重点課題② 北極海氷情報室 の2024年度フォーラムが、合同の公開講演会「北極航路研究の最前線」として、 […]

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報告者:矢吹 裕伯(国立極地研究所 北極海氷情報室)
関連課題:重点課題②

ArCS II北極航路課題の成果報告会と重点課題② 北極海氷情報室 の2024年度フォーラムが、合同の公開講演会「北極航路研究の最前線」として、2024年11月27日に工学院大学新宿キャンパスおよびオンラインでハイブリッド開催されました。現地26名とオンライン55名で合わせて81名の参加でした。

午前は、北極海氷情報室2024年度フォーラムとして、北極海氷情報室とArCS IIの各課題との連携の成果や情報発信、それらのフィードバックを一般の方々にも公開し、幅広い層からのご意見をいただくことで今後の研究や情報発信の方向性を探ることを目的として行い、午後は北極航路課題の2024年度の成果報告会を行いました。プログラムはこちら を参照ください。

午前の部では、「みらい」北極航海2024のために実施した海氷予報とその評価について報告を行いました。まず航海前の計画段階で実施した中期予報による北極海氷の分布や海氷厚に関して発表を行いました。また航海中に実施した航海計画域に限定した10日先までの海氷数値予報の発表、さらには北極全域での10日先までの海氷数値予報の精度に関しての発表などが続き、実際に「みらい」北極航海2024に参加した乗船研究者や船舶運航者からの評価を得ました。質疑応答では、活発な情報交換が行われ、またアンケートの実施により広範囲な意見を参照することができ、貴重な情報交換の場となりました。

午後の部では、北極航路課題で実施してきた、航行支援のための海氷情報生成機器の開発に関する成果、北極海環境を考慮した氷海船舶のリスク評価とそれに基づくルール化に関しての成果、北極海における油流出によるリスク評価とその対策に関しての成果、気候変動を考慮しての北極航路利用の経済評価に関しての成果の報告が行われ、最終成果へのまとめの状況が報告されました。

また特別講演では、今後北極海に関して実施すべき研究課題に関して詳しく紹介され、北極航路課題にとって貴重な情報となりました。

参考:合同講演会「北極航路研究の最前線」開催のお知らせ

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「ArCS II 若手人材海外派遣プログラム2024年度参加報告会」開催報告 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2025-01-06-1/ Mon, 06 Jan 2025 06:02:17 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13599 2024年12月19日(木)、TKP東京駅カンファレンスセンター(東京都中央区)においてArCS II若手人材海外派遣プログラム2024年度参加報告会を開催しました。今年度も現地とオンラインのハイブリッド形式での開催とな […]

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2024年12月19日(木)、TKP東京駅カンファレンスセンター(東京都中央区)においてArCS II若手人材海外派遣プログラム2024年度参加報告会を開催しました。今年度も現地とオンラインのハイブリッド形式での開催となり、派遣プログラムの参加者10名(現地出席8名・オンライン出席2名)による研究成果の発表および、現地参加者と本プログラム関係者による座談会が行われました。

発表では今回の派遣目的、研究内容、派遣先での取り組み状況や研究成果についての報告がされました。各々工夫を凝らして作成したスライドをスクリーンに映しながら、参加した学会での発表風景、現地での調査・観測の様子や得られた成果、大変だったことや予期せぬトラブルについて等、さまざまな報告がされました。熱意を持って取り組んだことが伝わる興味深い発表となり、発表を聞いていた関係者や他の参加者からの質疑応答も盛んに行われました。また、派遣先での滞在中の過ごし方や、地域の方々・他の研究者との関わりについても語られ、海外での新鮮な体験の様子を臨場感と共に感じることができました。

その後の座談会でも和やかな雰囲気の中で活発な意見交換がなされ、大変実りある報告会となりました。

発表の様子
座談会の様子

参加者からは、他の参加者と交流できて非常に充実した時間を過ごせた、他の派遣者との交流や報告を聞くことができ大変勉強になった、といった感想が寄せられ、今後の人脈構築を含め人材育成としての重要な役割を担っている事業であると感じました。

 

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ArCS IIイベントシリーズ・サイエンストーク「とける永久凍土 現地では何が起きているのか?」を開催しました https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/st1207iijima/ Fri, 27 Dec 2024 03:01:22 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13574 ArCS IIの最終年度である2024年度は、代表機関の国立極地研究所の南極・北極科学館を中心に、ArCS IIイベントシリーズ「ようこそ、北極へ!」を、年間を通して行っています。2024年12月7日(土)には、飯島 慈 […]

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ArCS IIの最終年度である2024年度は、代表機関の国立極地研究所の南極・北極科学館を中心に、ArCS IIイベントシリーズ「ようこそ、北極へ!」を、年間を通して行っています。2024年12月7日(土)には、飯島 慈裕氏(東京都立大学)を講師に迎え、サイエンストーク「とける永久凍土 現地では何が起きているのか?」を実施しました。


登壇者の飯島氏は、自然地理学(特に気候学)が専門で、永久凍土について20年以上研究を続けています。サイエンストークは、人工的に作った凍土を全員に触ってもらうところから始まりました。参加者は、「冷たい!」「硬い!」などの声を上げつつ、興味深そうに凍土と普通の砂とを触り比べていました。その後、永久凍土の成り立ちや特徴を、多くの貴重な写真や映像とともに紹介しました。

次に、地球温暖化による永久凍土への影響を、現地調査の様子を交えながら紹介しました。東シベリアでは、気温の上昇と積雪の増加により、地下の温暖化と湿潤化が同時に起こっています。その結果、カラマツ林の枯死や土壌からの温室効果ガスの放出、サーモカルストと呼ばれる地表面が沈降する現象の出現で空港や家屋、農地が使用できなくなるなど、さまざまな影響が出ています。研究者は現地に暮らす人々への情報提供や意見交換を通して、変わりゆく永久凍土に適応する方法をともに探っていることも紹介しました。

質問の時間には、「永久凍土層は地下何mまで続いているのですか。」「永久凍土がとけると、地中から温室効果ガスやマンモス以外でどのようなものが出てくるのでしょうか。」「人々の生活が保障できなくなる、住めなくなるということは今後あるのでしょうか。」などの質問が出て、サイエンストーク終了後にも熱心に質問する参加者もいました。

参加者アンケートには、「降水量が少ない土地でも森林が広がっているのは、永久凍土のお陰なのだと納得しました。」「温暖化が進むと単純に気温が高くなって雨や雪の量が減るものだと思っていましたが、永久凍土の地域ではその反対のことが起こっていて、すごく興味深かったです!」「今後、現地に住む人々に対して、どのような影響や配慮が必要になりそうかを考えるきっかけになりました。」「永久凍土に関する知識だけでなく、映像を通して調査風景や現地の人々の生活、温暖化によるサーモカルスト現象などを学ぶことができ、とても楽しかったです。」「北極の研究が学際的な非常に興味深い学問だと知れました。今、学校で受けている授業でもその1つ1つが環境問題などに役立つかもしれないのだと思って励みたいです。」「地図や実際の道具などが用意されていて、北極研究を実感しやすかったです。」「紹介して下さっていた本をいくつか買って読んでみたく思います。」などの感想が寄せられ、参加者の永久凍土や北極域研究への興味・関心をさらに引き出すことができました。

 

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ArCS IIイベントシリーズ・サイエンストーク「グリーンランドにくらす人々のくらしと毛皮との関わり」を開催しました https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/tanken0928kusaka/ Fri, 27 Dec 2024 03:01:08 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13571 ArCS IIの最終年度である2024年度は、代表機関の国立極地研究所の南極・北極科学館を中心に、ArCS IIイベントシリーズ「ようこそ、北極へ!」を、年間を通して行っています。2024年9月28日(土)には、国立極地 […]

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ArCS IIの最終年度である2024年度は、代表機関の国立極地研究所の南極・北極科学館を中心に、ArCS IIイベントシリーズ「ようこそ、北極へ!」を、年間を通して行っています。2024年9月28日(土)には、国立極地研究所の一般公開「極地研探検2024」 の一部として、日下 稜氏(北海道大学)を講師に迎え、サイエンストーク「グリーンランドにくらす人々のくらしと毛皮との関わり」を実施しました。


日下氏は高校2年生の時に初めてグリーンランドを訪れ、今はグリーンランド北西部の村・カナックやシオラパルクで研究活動を行っています。サイエンストークでは、グリーンランドの地理やさまざまな生き物、そこに暮らす人々の生活を、動物の毛皮を中心に紹介しました。寒さのため植物がほとんど育たないグリーンランドでは、動物は現地の人々の衣食住において欠かすことのできないものです。ホッキョクグマをはじめ、ジャコウウシ、アゴヒゲアザラシ、グリーンランドドックなどがどのように活用されているかを、現地で撮影された貴重な写真を多く使いながら紹介しました。

会場では、日下氏が北極で収集してきた動物の毛皮や加工品も展示しました。手触りが非常に柔らかなホッキョクウサギ、種類によって毛足の長さや質感が大きく異なるアザラシ、鋭い爪を持つホッキョクオオカミ、極寒の環境に耐えうる3層構造の毛皮を持つジャコウウシの毛皮などを、実際に手で触って体験してもらいました。アザラシの皮で作った犬ぞり用のムチについては、その製造工程を実物や写真、経験談を交えて紹介しました。展示では、現地の人たちが食用としてだけでなく動物を丸ごと活用している様子を来場者に伝えることができ、子供から大人までが楽しんでいる様子が印象的でした。

参加者アンケートには、「北極の村で実際暮らしたことのある研究者の話が聞けたのは貴重な体験でした。」「色々な動物の毛皮の使われ方を知ることができ興味深かったです。」「サイエンストークの切り口がおもしろかったです。」などの感想が寄せられました。毛皮の展示については、「北極に住む動物の毛に普段触ることはできないのでよかったです。」「アザラシの毛皮が思っていたのと違っていて意外でした。」「3歳と1歳の子供も興味を持って触って見たりしてとてもよかったです。」「サイエンストーク、毛皮、グリーンランドの各企画がそれぞれ工夫されていて、あまり内容に詳しくない題材のものでも楽しむことができました。」などの声が届き、参加者の毛皮や北極に暮らす人々のくらしや文化への興味・関心を大きく引き出すことができました。

 

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サイエンスアゴラ2024にブース出展しました https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/agora2024/ Thu, 28 Nov 2024 06:47:35 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13414 2024年10月26日(土)、27日(日)に、東京お台場で開催された科学技術振興機構(JST)主催の科学技術イベント サイエンスアゴラ2024  にブース出展しました。参加4年目となった今年、ArCS IIブース「今、な […]

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2024年10月26日(土)、27日(日)に、東京お台場で開催された科学技術振興機構(JST)主催の科学技術イベント サイエンスアゴラ2024  にブース出展しました。参加4年目となった今年、ArCS IIブース「今、なぜ北極!? ~気候変動と私とのつながり~」 では、若手研究者によるサイエンストークとパネルや実物の展示を中心に提供しました。科学技術好きの親子連れや学生、科学館・教育関係者など2日間で500名程度の方がブースを訪れました。

 

サイエンストーク:若手研究者が語る!北極域研究の最前線

若手の北極研究者が、気候予測、雪氷微生物、海洋生態系、大気観測について紹介するサイエンストークを行いました。

トーク① 「激動する北極の気候」

気象学・気候学が専門の相澤 拓郎氏(国立極地研究所/気象庁気象研究所)は、スーパーコンピュータ上に地球を再現した「地球システムモデル」を用いた北極の気候変動解析や将来予測について紹介しました。北極の温暖化は1979年以降、地球全体平均と比較して約3倍のスピードで進んでいます。北極の気候は過去100年の間、自然及び人間活動に起因する変化に人間活動とは無関係に生じる変動が重なって、激しくゆれ動いてきました。今後も温室効果ガスの排出が増え続ければ、北極の気温は急速に上昇し続ける可能性が高いことを伝えました。参加者からは「観測技術の質は解析の精度に影響を与えるのですか」「現在の予測だと2100年には北極海に氷は無くなってしまうのでしょうか」などの質問が寄せられました。

 

トーク② 「氷河上で生きる微生物」

雪氷生物学が専門の小林 綺乃氏(千葉大学)は、氷河上に生息する微生物、特に氷河の融解水がたまる水たまり・クリオコナイトホールに繁殖するツボカビについて紹介しました。氷河の融解を促進する原因の一つが、雪氷藻類による氷河の暗色化です。ツボカビは研究が始まったばかりで謎が多い微生物ですが、世界中の氷河で発見されており、雪氷藻類に感染することで氷河の暗色化を抑制する可能性があることが分かってきました。また、観測拠点であるグリーンランドのカナック村での生活や住民との交流など、観測活動の全体像も伝えました。参加者からは「ツボカビは最近発見されたのですか」「場所によってツボカビの感染率は異なるのですか」などの質問が寄せられました。

 

トーク③ 「北極海の泥に眠る小さなタネ」

生物海洋学が専門の深井 悠里氏(海洋研究開発機構)は、北極海の豊かな生態系を支える植物プランクトンについて紹介しました。この大増殖には海底に沈んだ植物プランクトンのタネ(休眠期細胞)が重要な役割を果たしているのではとの考えや、海氷の融解時期や日射量の変化がどのように大増殖に影響を与えるのかを、北極海の海底から採集してきた泥を見せながら伝えました。また、今夏も参加した海洋地球研究船「みらい」の北極航海でのこぼれ話も紹介しました。参加者からは、「北極海の場所によってタネの種類や量が違いますか」「植物プランクトンの増殖パターンには塩分も影響しますか」などの質問が寄せられました。

 

トーク④ 「飛行機から診る北極上空の温室効果ガス」

大気化学が専門の藤田 遼氏(気象庁気象研究所)は、航空機を利用した大気観測について紹介しました。航空機で大気観測を行うしくみ、温室効果ガス濃度を定期的に測定することの重要性、長年にわたる観測で明らかになってきたこと、例えば、化石燃料の大量消費や夏の植物の光合成が二酸化炭素濃度に大きな影響を与えること、大気中のメタン濃度は増え続けていることなどを伝えました。サイエンストーク後には、手動の大気採取装置(MSE)の体験会も行われました。参加者からは「高緯度で二酸化炭素の季節変化が大きいのはなぜですか」「温暖化により植物が増えると二酸化炭素の吸収量に影響はあるのでしょうか」などの質問が寄せられました。

 

展示:見て、触って、語って、北極のリアルを知ろう!

展示では大型北極域地図や展示パネル、タブレットなどを活用し、北極やArCS IIの活動について紹介しました。今年はそれに加え、雪氷微生物を観察できる顕微鏡、北極海で採取した海氷や泥、航空機に搭載した大気観測装置、地球儀の工作  などを展示しました。来場者は子供から大人まで幅広く、展示物を見たり触ったりしながら、研究者と北極や研究について活発に語り合いました。

ブース内に設置したオピニオンボードには、「さまざまな要因によって北極の気候が大きく変化していることがよく分かりました」「ツボカビの解明が楽しみです」「植物プランクトンの大増殖の時期が変動する理由に納得でした」「研究者は地球のお医者さんという言葉に感動しました」「自身の研究を分かりやすく社会に伝えていて、素敵な科学コミュニケーション活動だと感じました」などの声が寄せられました。

 

今回のサイエンスアゴラへの参加は、ArCS II研究者が市民、特に、学生、科学館・教育関係者、メディアと交流する貴重な機会となりました。JSTのウェブメディア・サイエンスポータルでは、ArCS IIブースについての報告記事  が公開され、北極の注目度の高さがうかがわれました。他機関とのネットワーキングや連携の継続・拡大につながる良い機会にもなり、今後のアウトリーチ活動の発展が期待されます。

 

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ArCS IIイベントシリーズ・企画展示「キョクホクの大河」を開催しました https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2024-11-19-1/ Tue, 19 Nov 2024 07:01:34 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13342 ArCS IIの最終年度である2024年度は、代表機関の国立極地研究所の南極・北極科学館を中心に、ArCS IIイベントシリーズ「ようこそ、北極へ!」 を、年間を通して行います。7月17日~8月31日は、北極の自然とそこ […]

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ArCS IIの最終年度である2024年度は、代表機関の国立極地研究所の南極・北極科学館を中心に、ArCS IIイベントシリーズ「ようこそ、北極へ!」 を、年間を通して行います。7月17日~8月31日は、北極の自然とそこに暮らす人々の生活をテーマにした企画展示「キョクホクの大河」 を、国立極地研究所の南極・北極科学館で開催しました。


本企画展示は、ロシアのウラル山脈と中央シベリア高原の間を流れ北極海に注ぐ大河「オビ川」をテーマに、オビ川の自然環境やそこに暮らす生き物、川に関わる人々の営みを、日本と比較しながら紹介したものです。パネルでの情報提供だけでなく、魚のはく製やハンティの服飾品などの実物や、ロシアの食卓を床に投影した体験型の展示、来場者の「推し川」を紹介し合う交流ボードが設置されました。展示の詳細については、国立極地研究所のウェブマガジン「極」に掲載した記事 をご覧ください。

展示期間中は、展示制作者の大石 侑香氏(神戸大学)によるYouTube liveやサイエンストーク、渡辺 友美氏(東海大学)による現地でのギャラリートークを実施しました。スペースの都合上盛り込めなかった内容や、展示品についての詳細な解説、展示制作のこぼれ話なども紹介し、参加者と活発な質疑応答がなされました。

参加者アンケートでは、約9割の回答者が「(今まで)オビ川を知らなかった」と答えましたが、展示体験後には約9割が「オビ川や日本の川に興味を持った」と答えました。寄せられた感想には、「初めての知識でとても興味をもちました。一生に1回の経験になりました。」「聞いたことのない魚やその1年のくらし方など、絵や標本を実際に使って説明していて、とてもわかりやすくおもしろかったです。」「その土地の人々の暮らしと川の関わりが分かりやすかった。魚料理が美味しそうだった。」「日本にも凍る大きな川があること、初めて知りました。」「日本と海外の川のちがい、生態系の特徴をよく理解することができました。 凍らせることで、寄生虫のリスクを低減させているのか…とその土地の食文化の工夫に気付かされました。」「子供達の推しの川などを貼る企画がよかったです。」などがありました。夏休み期間にふさわしい、子供から大人までが楽しめる企画展示となりました。

 

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ArCS IIイベントシリーズ・サイエンストーク「トナカイが魚を食べる!?:永久凍土がつくる環境と人のくらしと生きものたち」を開催しました https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2024-11-08-1/ Fri, 08 Nov 2024 06:59:24 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13255 ArCS IIの最終年度である2024年度は、代表機関の国立極地研究所の南極・北極科学館を中心に、ArCS IIイベントシリーズ「ようこそ、北極へ!」を、年間を通して行います。2024年8月10日(土)には、大石 侑香氏 […]

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ArCS IIの最終年度である2024年度は、代表機関の国立極地研究所の南極・北極科学館を中心に、ArCS IIイベントシリーズ「ようこそ、北極へ!」を、年間を通して行います。2024年8月10日(土)には、大石 侑香氏(神戸大学)を講師に迎え、サイエンストーク「トナカイが魚を食べる!?:永久凍土がつくる環境と人のくらしと生きものたち」を実施しました。


登壇者の大石氏は、文化人類学や生態人類学が専門で、2010年代に西シベリアの森林地帯で先住民のハンティと生活を共にし、彼らの生活や文化を研究してきました。前半の話題提供パートでは、北極に暮らす先住民とその生業(狩猟採集、漁撈、トナカイ牧畜など)について、多くの写真を交えて紹介しました。また、西シベリアのトナカイ牧畜では、トナカイに魚や塩を与えて手なずけており、人間―魚―トナカイの共存関係が築かれていることも紹介しました。

後半のワークでは、ハンティの一年を通した生業カレンダーに倣って、参加者それぞれの「自分カレンダー」や「自分地図」を作成しました。普段の自分の生活サイクルやその季節性、行動範囲を振り返り、ハンティのカレンダーと比較することで、両者の相違点や共通点を見出す試みを行いました。

質問の時間には、「どのようにしてハンティと一緒に暮らせるようになったのか」「季節の変化に生活圏の大規模な移動はあるのか」「トナカイに魚を与えるようになったのはいつごろか」「アイヌと西シベリアでは衣装のモチーフに共通性はあるか」「ハンティは現金を使うのか、どう手に入れるのか」「ソビエト連邦の崩壊前後でハンティの生活に変化はあったか」「いつ頃からこの分野に興味を持ったのか」など多くの質問が出て、サイエンストーク終了後にも熱心に質問する参加者もいました。

参加者アンケートには、「西シベリアの先住民の生活について詳しく知ることができた」「先導トナカイを作り、トナカイの特性を利用して生活しているということが面白かった」「争いごとは占いやシャーマンにより解決するとのことで、殺し合いに発展しないことがとてもリスペクトする点だった」「質疑応答では非常に活発な議論が交わされ、さまざまな人の着眼点を垣間見ることができたのが有意義な点だった」「大石さんの雰囲気を実際に拝見して、こういう方なので現地調査ができたのだなぁと思った」などの感想が寄せられ、参加者の北極研究や先住民の人々への興味・関心をさらに引き出すことができました。

 

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ArCS IIイベントシリーズ・実験教室「北極海はどんな海だろうか?」を開催しました https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2024-08-08-3/ Fri, 09 Aug 2024 02:43:27 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=12619 ArCS IIの最終年度である2024年度は、代表機関の国立極地研究所の南極・北極科学館を中心に、ArCS IIイベントシリーズ「ようこそ、北極へ!」を、年間を通して行います。夏休み期間の2024年8月2日(金)には、丹 […]

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ArCS IIの最終年度である2024年度は、代表機関の国立極地研究所の南極・北極科学館を中心に、ArCS IIイベントシリーズ「ようこそ、北極へ!」を、年間を通して行います。夏休み期間の2024年8月2日(金)には、丹羽 淑博氏(国立極地研究所)を講師に迎え、中高生を対象とした実験教室「北極海はどんな海だろうか?」を実施しました。


まず初めに、北極海の位置と地理的特徴を説明し、それから実験に取り組みました。実験では真水と塩水を入れたコップの中に氷を入れてそのとけ方を比較し、塩水のコップの氷の方がゆっくりとけることを確認しました。そして、なぜそうなるのかを考察するため、コップの中の水温と塩分を測定し鉛直分布のグラフを作ったり、スポイトで色水を加えてコップ中の液体の流れを観察したりしました。

実はこの実験、北極海の海洋構造を再現するものになっています。このことを、実際の海洋データから水温と塩分の鉛直分布を読み取ることで確かめました。これら実験やデータ分析を通じて、北極海で海氷ができるしくみや、北極域で冷やされた海水が深海に沈み深層循環ができることを学んでもらいました。そして、最後に温暖化が急速に進む北極海の将来について考えました。

質疑応答の時間には、「塩水のコップの壁に気泡が付いているのはなぜか。」「どの液体が沈み込むかは塩分と水温のバランスで決まっているのか。」「シロクマはこのままでは絶滅してしまうのではないか。」「なぜしらせは北極に行かないのか。」「極地研での仕事には研究以外にどのようなものあるか。」など多くの質問が出ました。

参加者アンケートには、「実験や分布表など、今まで見たことや体験したことがないものが多くあり、ワクワクしました。」「北極海にはどこにでも氷があると思っていたが、ノルディック海には氷が無いと知り驚いた。」「1000 mなどの深海を調査する方法について気になった。」「深層循環が減少したり無くなったりしたら何が起こるかを調べたいと思った。」「海洋物理という分野を初めて知り興味が湧いた。」などの感想が寄せられ、参加者の北極海や海氷、研究、地球温暖化への興味・関心をさらに引き出すことができました。

 

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