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サイエンスアゴラ2023にブース出展しました

2023年11月18日(土)、19日(日)に、東京お台場で開催された科学技術振興機構(JST)主催の科学技術イベント サイエンスアゴラ2023  にブース出展しました。ブースには科学技術好きの親子連れや学生、科学館・教育関係者などが2日間で400名程度訪れ、研究者に熱心に質問をする姿が多く見られました。ArCS IIブース「地球温暖化の最前線、北極のリアルとは?」では、以下の3つのプログラムを提供しました。

 

サイエンストーク:研究者が語る北極のリアル

11月18日(土)は「海の日」、11月19日(日)は「陸の日」として、北極研究者が北極や研究観測について紹介するサイエンストークを行いました。

トーク① 「北極海はどんな海だろうか?」

海洋物理学が専門で海洋教育の普及活動にも関わっている丹羽 淑博氏(国立極地研究所)は、地球温暖化の影響を受けて大きく変わりつつある北極海の特徴や変化について、実験を交えながら紹介しました。北極海の特徴は、海氷が存在すること、海水温と塩分が異なる2つの海域が存在することであり、北極圏が温暖化することにより、北極海だけでなく地球の海洋深層循環にも影響が出ることを伝えました。参加者からは、「海氷が沈み込む際、海水温と塩分(海水の密度)にはどのような関係があるのでしょうか」、「北極海の温暖化は日本にも影響があるのでしょうか」などの質問が寄せられました。

 

トーク② 「極北カナダ・ケンブリッジベイでの氷上観測」

海氷生物地球化学が専門の野村 大樹氏(北海道大学)は、2022年、2023年にカナダ・ケンブリッジベイの海氷上で行った観測活動について紹介しました。凍る海が温室効果ガスの吸収・放出に果たす役割や海氷下の生態系を解明するため、フィールドではどのような観測を行っているのかを紹介し、現地で採集した海氷コアを参加者に触ってもらいました。また、海外との共同研究、現地イヌイットとの交流、観測施設での生活の様子など、観測活動の全体像も伝えました。参加者からは「海氷下の環境DNAはどのように採集するのですか」、「人間が出す二酸化炭素は、二酸化炭素の観測にどのくらい影響があるのでしょうか」などの質問が寄せられました。

 

トーク③ 「アラスカの氷河と温室効果ガス」

地理学、雪氷学が専門の紺屋 恵子氏(海洋研究開発機構)は、アラスカの氷河域での温室効果ガス・メタンの観測について紹介しました。メタンは二酸化炭素に次いで温室効果の高い気体で、近年、北極域の氷河からも放出されていることが発見されました。メタンが放出されている場所や量を明らかにするために、アラスカ氷河域でどのように観測をしたのかを、実際に観測に使用した測定機器を見せながら伝えました。参加者からは、「観測場所までにどのようにしていくのですか?」、「測定機器はどのようにして持っていくのですか?」、「北極域でのメタンの観測に適した季節はありますか」などの質問が寄せられました。

 

トーク④ 「シベリア永久凍土から明らかになる温暖化?温暖化って大変!?」

情報学や雪氷学、凍土学が専門の矢吹 裕伯氏(国立極地研究所)は、「大変!」をキーワードに、シベリアの永久凍土の融解の実態や社会への影響を紹介しました。まず、永久凍土とはどのようなものか、凍土の融解を引き起こしている地球温暖化がどれほど深刻かを、氷を解かす実験を例に挙げて伝えました。次に、永久凍土の融解の実態を探るため、シベリアで行った凍土観測の様子を裏話も交えて紹介しました。参加者からは「シベリアの永久凍土には虫がいますか」、「現在、ロシアでの観測はどうなっていますか」、「日本には永久凍土はありますか」、「なぜ氷に興味を持ったのですか」などの質問が寄せられました。

 

工作:手作り地球儀を作ってみよう!

地球環境の変化を身近に感じてもらうことを目的に、国立極地研究所の北極域データアーカイブシステム(ADS)  で公開している海氷分布や海面水温の人工衛星データを印刷した紙を使用して、簡易的な地球儀を作る場を提供しました。北極海の海氷面積は、3月が最大で9月が最小になります。北極の環境変化を感じてもらえるように、過去20年分の3月と9月の折り紙やワークシートを用意しました。親子連れから学生・大人までが参加し、印刷されたデータの内容について研究者の説明を聞きながら地球儀を製作していました。

 

展示:急変する北極が私たちにもたらす影響と日本の北極研究の取り組み

大型北極域地図やパネル、タブレットなどを活用し、北極やArCS IIの活動について紹介しました。来場者は展示物や配布資料を見ながら、地球温暖化の実態やなぜ日本が北極で調査をしているのかなどについて研究者に質問していました。ブース内に設置したオピニオンボードには、「北極のリアルを知る研究者の話が聞けて良かった」、「北極をテーマに学校で授業をしてみたい」、「北極についてもっと情報発信をしてほしい」などに加え、「研究者は研究の重要性を社会に伝えてください」などの声が寄せられ、市民の北極研究者へ期待の大きさが感じられました。

 

今回のサイエンスアゴラへの参加は、ArCS II研究者が一般市民や科学館・教育関係者と交流する貴重な場になりました。他機関とのネットワーキングや連携の継続・拡大に繋がる良い機会となり、今後、ArCS IIの活動の発展が期待されます。

 

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