
諏訪園 朋也(すわぞの ともや)
阪南市立舞小学校
南極は私にとって遠いとおい世界でした。「寒い、たくさんの雪と氷、ペンギンがたくさん。」くらいの認識しかなかった私が、南極のおもしろさにふれたきっかけがこの教員南極派遣プログラムでした。観測隊に同行し、生活をともにしながら、めくるめく南極の世界を目の当たりにするのは刺激的すぎる毎日です。ペンギン、アザラシ、大きすぎてスケール感のわからない氷山・氷河…。それらもさることながら、南極の最前線で活躍する研究者の方々や観測の基盤となる昭和基地を守る設営チームの方々からさまざまなお話を聞けたことが、教員の世界しか知らない私にとって一番の学びでした。
そんな派遣教員の山場となるのが、昭和基地滞在の最後に待っている南極授業です。私の勤務校である大阪府阪南市立舞小学校に向けて1日に2コマの授業を実施しました。授業のベースにあるのは私自身が派遣プログラムに参加するまでに南極に関わる事柄を知る中で久々に感じたことです。南極に関心を持ち始めてから、さまざまな書籍を読みました。仕事に直結する書籍ばかり読んでいた私にとって、久々に純粋な自分の興味だけで書籍を読み進めた時に「自分の知らない世界を知る楽しさ」を感じました。
そこで本校5・6年生に対してそれぞれ「観測隊員の仕事とそこにかける思い」「南極の環境と生物」を題材に、自分が知らない南極の世界のおもしろさを感じてもらう授業を構想しました。授業は生中継、昭和基地にはそれぞれの分野のプロフェッショナルである隊員の方がたくさんいます。私たち派遣教員は南極の野外観測にも同行させてもらいましたが、それよりも基地にいるたくさんの隊員たちとの(画面越しではありますが)出会いの機会を大切にしたいと考えました。「人との出会いに勝る教材はない」という、かつて先輩に教えてもらった言葉が浮かんでいたからです。計13名の隊員の方々とそれぞれ打ち合わせをし、授業に出ていただくことにしました。
1コマ目、仕事に関わる「音」をきっかけに基地内をまわりながらお話を聞いていきます。短いながらもやりとりができたら、と考えました。5年生の児童が気になったことを隊員の方々に投げかけると、答えが返ってきます。そしてまた質問をする。そうして隊員の方の仕事についての考えや思いを知りながら、それぞれの役割があってこそ昭和基地のインフラが維持されていることを知っていきます。最後に越冬隊長から、厳しい環境で基地を維持しながら越冬し、観測を続ける意義についてお話をいただきました。
2コマ目は南極の気候について知った後、6年生児童が事前授業で考えた「南極で生息できそうな新しい生物」を、生物を対象に観測をされている3名の隊員の方に向けて発表し、コメントをもらいました。事前学習で南極の自然環境の概要を知り、そこに適応できると思われる工夫をした生き物を考えてもらっていました。隊員の方々にはそれぞれの生き物の工夫されている点や改善が必要な点についてコメントをいただき、南極の環境に適応した実在する生き物を紹介してもらいました。2コマ目のしめくくりとして、海洋観測に取り組まれている隊員の方に、南極の海の変動状況や、これから考えられる変化、そして日本とのつながりについて小学生向けにお話をいただきました。遠い南極ですが、海や大気などを通して地球全体はつながっています。短い時間スケールでは小さな変化でも、南極での変動は日本で暮らす私たちとは決して無関係ではないことにも気づいてもらえたらと感じました。
この2コマの授業は5・6年生が取り組む学習のまだ道半ばです。この後も学習は続きます。まだ今回の授業は興味の種をまいた段階だと私は考えています。今回の授業をきっかけに南極への関心をさらに高めてもらいたいと思います。願わくは、将来日本の南極観測に携わる子が現れるとうれしいです。ただ、そうでなくとも大人になった時に南極の話を耳にした時に興味を抱く子たちが増えているとうれしいと思っています。
最後になりましたが、今回の授業はもちろんのこと、帰国後の授業づくりに向けてたくさんの隊員の方にお話を聞かせていただき、お力添えをいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。南極から地球の過去を探り、そしてこれから先の未来のことを考えていくためにも、みなさまの力で「南極観測」が末永く続いていくことを祈っております。


