2017年3月7日(火)第1回若手研究者派遣成果発表会が、ArCS全体会合の直後に開催されました。今回の成果発表会には、田原成美さん(大阪府立大学)、中野渡拓也さん(国立極地研究所)、大嶋亮造さん(株式会社商船三井)そして私(神戸大学)の4名が参加しました。残念ながら発表会に参加できなかった喜岡新さん(インスブルック大学)は、全体会合のポスターセッションでの参加となりました。
1月8日(月・成人の日)に、日本科学未来館(東京お台場)の常設展の一角にて、サイエンティスト・クエスト特別編「どうなる?北極~海と生き物と私たち~」を開催いたしました。「北極の氷が解けたら、〇〇になる?」を共通の問いとして、テーマ4から「北極の海と氷と小さな生き物」、テーマ6から「ミズナギドリの渡り」、テーマ7から「北極海の氷が減ると?~〇〇が変わる」の3つの講演を各2回ずつ実施しました。
ArCSの若手研究者海外派遣支援事業の助成を受け、2016年9月1日から2017年5月31日の9か月の間、米国オハイオ州立大学のバード極地研究所に滞在し北極海の古海洋研究を行いました。バード極地研究所には北極海から採取された堆積物が保管されており、北極海の古海洋研究をする上で非常に恵まれた環境でした。
2016年7月25日~9月29日にかけて、ArCS若手研究者海外派遣支援事業の助成を受け、モスクワ国立大学凍土学専攻に滞在しましたので、報告いたします。
ArCSの「北極関連会合専門家派遣」と「国際共同研究推進:テーマ7」の成果として、2017年5月北極評議会(Arctic Council:AC)の下で交渉され成立した国際条約、北極科学協力協定の意義を分かりやすく解説する記事が公表されました。北極8ヶ国、すなわちカナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデン、米国の外務大臣が署名して成立した「北極に関する国際科学協力の促進に関する協定」(北極科学協力協定)は、地理的には北極域全体を一体としてカバーし、機能的には北極に関するすべての科学活動を対象にして、国際的な科学協力を促進するための新条約です。ACをフォーラムとして交渉され妥結した条約はこれで3つ目となります。ACの条約形成フォーラムとしての活用が今後も注目されます。
懸案でありました国立極地研究所とロシア北極南極研究所(AARI)との共同研究の合意書(包括的MoUおよび具体的観測についてのAgreement)が締結され、去る2017年10月より北極海のケープ・バラノバ基地(Cape Baranova、79.27N, 101.75E、セベルナヤ・ゼムリヤ諸島;2013年観測再開)でArCSの一環としての共同観測が始まりました。これを機にAARI新所長Dr. Alexander Makarov以下5名を国立極地研究所に招聘し、日露における北極研究についてのワークショップを開催し、最近の北極研究の状況紹介、共同研究の詳細打ち合わせを行いました。
2017年3月1日から5月30日にかけて、私はドイツのアルフレート・ウェゲナー研究所(AWI)にArCS若手研究者海外派遣支援事業の助成を受けて滞在しました。AWIはいくつか施設を持っているのですが、私がお世話になった研究室はドイツ北部のブレーマーハーフェンという港町にありました。ブレーマーハーフェンはドイツ国内で製造された自動車や風車の輸出拠点となっており、北海道の苫小牧に雰囲気が似ていました。
2017年1月4日から4か月間、ArCS若手研究者海外派遣支援事業の派遣者として、カナダのトロント大学に4ヶ月間滞在しました。私は、冬季の北極成層圏で発生する成層圏突然昇温という力学現象を対象として研究を行なっております。この現象は、数日のうちに極域成層圏の気温が数十度も上昇し、対流圏の気流の流れにも影響を及ぼしうる極端現象です。受け入れ研究者であるPaul Kushner教授は、成層圏力学の分野において著名な方です。本事業の支援があったからこそ、私は博士後期課程在学中の学生ながら、そのような海外の著名な研究者のもとで研究を行う機会を得る事ができました。このことについて深く感謝申し上げるとともに、このような素晴らしい事業がより多くの人に認知され、活用される事を願っております。
2017年3月22日から4月21日の約一ヶ月間、ロシア連邦サハ共和国ヤクーツクのロシア科学アカデミーシベリア支部北方圏生物問題研究所(IBPC)を訪問しました。サハ共和国の沿岸部では、近年ホッキョクグマの摂餌生態(行動圏や食性)が変化していることを示唆する情報が得られていますが、その実態や発生要因は明らかとなっていません。そこで私は、IBPCとの共同研究課題として、本地域に分布するホッキョクグマの摂餌生態に関する研究に取り組もうと考えています。今回の訪問の目的は、今後の研究・調査の体制を整えること、そして実際に一回目の野外調査を実施し、食性解析のためのホッキョクグマの糞を採集することでした。